艶やかで、ふくよかで、聴いているだけでこちらの心がどこまでも広がっていくような歌声・・・アジア史上最高のテノールといわれたオペラ歌手、ベー・チェチョルさん。
この映画は、天才とうたわれキャリアを着実に築きつつあったチェチョルさんが、甲状腺ガンで声を失い、絶望のどん底から奇跡的に復活をとげる実話をもとにした物語、試写会で拝見してきました。
まず冒頭で流れる彼の歌声がほんとうに素晴らしい!
でも今回、彼の魂は天性の歌声や磨き上げた技術にあきたらず、もっとたかみを目指すチャレンジを心に決めてきたのです。それは、あらゆる感情・・・挫折、絶望、どん底の苦しみ、怒り、自暴自棄、悲しみ・・・希望、愛、感謝、信頼、喜び・・・を自分の魂に刻み深く込み、そこから溢れ出てくるすべてを歌として表現すること。
そして彼の魂が決めた今回の人生の筋書きは、すべての感情を一気に深く経験するために、まさに自分の「宝」である天性の声を一度失うということだったのです。
でもそれだけのチャレンジを決めてきてくるとき、ちゃんとそれを越えられるだけの応援団も用意してきているのです。
彼の場合は、どこまでも再起を信じてやまず、背中を押し続けてくれる音楽プロデューサーの存在であり、また再起不能といわれた彼の声帯を調整することができる技術をもったお医者さんの存在。(お二人とも、試写の会場にいらしていました。)
わたしたちの人生には、ときとしてとても越えられないように思える壁がたちはだかります。それは外からやってきたように見えたとしても、じつは自分の魂がたかみを目指して設定してきたハードル。そして、もちろんそれを越えるための手段もちゃんと用意してきているのです。その助けは自分の中にある・・・というよりも、たいてい外からてやってくる、そんな自分の守護天使さんたちを自分のまわりに用意しているのです。でもそれに気づくには、自分がちゃんと心を開いて、周りからの助けを受け入れる必要があります。
復帰したチョチェルさんの声は以前とはもちろん同じではないと思うのですが、きっと聴く人の魂の奥深くにしみこんで、彼がこの困難きわまる道のりで手にしてきた彼の魂の光をぞんぶんに伝えてくれるのだと思います。
試写はオペラを歌う友人とご一緒しました。プロの歌い手さんにはかなり辛口の彼女ですが、その歌声にとっても感動していました。10月に行われる東京での演奏会に行ってみるそうです。
テノールの響きも堪能できますが、映画として画面も美しいです(チェチョルさん役の俳優さん、ユ・ジテさんがとってもステキです)。また、このストーリーを見ることで、きっと自分自身の天使さんたちの存在にも気づくことができるようになるかもしれません。
「ザ・テノール 真実の物語」予告はこちら