とあるイタリアの小さな村でのこと。
その村はひどく貧しい。人々は公爵夫人の小作人で、働けど働けど農作物のすべてを搾取されてしまう。でも、人々は他の世界を知らないがゆえに、必死で働きつづける。
その村でいちばんの働きものはラザロという青年。彼は不平や不満、文句を知らず、せっせと働く。なぜなら、彼のこころはまったく判断をしないから、あるがままのなかで平和に暮らしている。
そんなある日、公爵夫人の息子が起こした偽装誘拐事件によって、村の人々は小作人制度がすでに廃止されている事実を知らされる。そして、人々はそこから解放されることになるのだが・・・ラザロの姿はどこにもない。(→予告を見る)
ラザロは新約聖書のなかに登場するイエスのお友だちの名前です。亡くなって数日後、イエスはラザロのお墓を訪れて「ラザロ、出てきなさい」と声をかけると、ラザロはお墓から出てくる・・・つまりイエスによって蘇った人物で、のちに聖人に列せられています。
この作品のなかのラザロ青年はまさに純粋無垢な存在なのですが、彼のあまりにまっすぐな瞳に衝撃を受けます。
この俳優さんは役者さんではないそうで、素人の高校生さんたちのなかからスカウトされたそうな。まるで裁くことを知らず、なにが起ころうとも平和のなかに生きているラザロのイメージにぴったりの青年でした。
ストーリーの結末はいろいろな解釈ができるので、観た人なりに感じることもさまざまだと思います。
ここでは私の感想はふせておきますが(ああ・・・言いたいっ!)、ただ「罪なきこころにはなんでもありなのだわ!」と深く感じいりました。
この作品はカンヌで脚本賞を受賞しているのですが、このアリーチェ・ロルバケルという監督さんは以前にもカンヌでグランプリを受賞されていて、そのときの作品が「夏をゆく人々」。
あら、「夏をゆく人々」は以前から私の「観たいものリスト」にすでに入っていた作品です。さっそくこちらも観てみたくなりました。
涙壷度:★★☆☆☆(じわっと涙が誘われました)
ストーリー自体も興味をひくのですが、この青年の存在があったからこそ、彼のまなざしあってこそ、さらに引きこまれます。
そしてなによりも、こころが澄みきっていることこそがいちばんの幸福なのだわ、と感じたのでした♡
PS お友だちが、BGMは大好きなイタリアの作曲家ベッリーニのオペラアリア「清らかな女神」だと教えてくださいました。「ラザロくんの目がダビデ像のお目めにそっくり」というコメントも、まさに! 彼の目は、世界を反射せずに澄んでいるのです。