「私は将来、お花屋さんになりたいです」「僕は電車の運転手さんです」。小学校の授業でよく見かける風景です。
9さいのアレックスくんはみんなのまえで「僕の夢はミス・フランス!」と、なんの躊躇もなく宣言するのですが、みんなから失笑をかってしまいます。
それからときは流れ、27さいのアレックスくん。ボクシングジムで働きながらも、うつうつとした毎日を過ごしています。
そこに幼なじみが現れ、彼と話しているうちにかつての夢がふたたびアレックスくんのこころに浮上しはじめ ・・・
彼はついに「ミス・フランス」のコンテストに挑戦することをこころに決めるのです。(→予告を見る)
アレックスくんがお化粧をして女性のいでたちをするとあまりに自然なので、「あれ?これは大柄の女優さんを起用しているのかしら?」と思ったのですが、やはり男性でジェンダーレスモデルのアレクサンドル・ヴェテールさんという方でした。
この映画に起用されたというよりも、監督が彼に出会って、彼の生き方に触発され、彼のために作ったような作品です。
もともとゴルチェのモデルさんからスタートしたそうですが、キャスティングディレクターには男性と女性と両方のコスチュームの写真を渡していたそうです。
この物語のなかで、アレックスくんがほんとうに自分の気持ちに正直になり、やりたかったことに勇気をもってつき進んでゆく姿に感動するのは、アレクサンドルさん自身がそんな生き方を貫いている方だからなのでしょう。
彼自身の生きざまがアレックスくんをリアルにして迫力をあたえています。
まだまだ世の中にはいろいろなジェンダーや年齢やもろもろの制限があふれかえっています。
たとえば「ミス・コン」にしても、自分はミスだと思っている人、コンテストに出る資格がある!と自分が思っている人がみな出られたらいいのにと思います。たとえ80さいのレディーであってもね。
「他人に自分の価値を決めさせるな!」・・・ ズバン!とこのメッセージが胸に飛びこんできます。
PS 予告はちょっとキラキラポッブなハリウッド仕様になっていますが、こちらフランス映画でそんなにイケイケな感じではありませぬ。
涙壷度:★★☆☆☆(アレックスの正面切って自分であろうとする姿に涙がでました)