津波に襲われて臨死体験をしたフランス人キャスター、あの世と交信できる天賦の才をもつアメリカ人サイキック、事故死した双子の兄ともう一度話しがしたいイギリス人少年 ・・・。
三人それぞれが「死」というものをとおして、違う世界をかいま見たり、つながれたり、心をひかれたりします。しかし、それが彼らをこの世界から「浮いた人」にしてしまい、その結果生きづらくなるのです。
ヒア アフターとは、まさに、ここのあと、あの世を意味しています。
キャスターのマリーは、臨死体験で深い安らぎや光を体験し、それ以降、相手を論破したり攻撃的になる今までの仕事スタイルに興味を失い、人とつながるという違う価値観をもちはじめます。丸くなってしまった結果、担当の番組を降板させられ、信用も失い、恋人ともうまくいかなくなり ・・・。
一方、生まれながらのサイキックであるジョーは、その能力を頼みとする人たちがつぎつぎに集まってくるのですが、私生活ではその能力が災いし、恋人もできずじまい。まさに、彼にとってはその能力こそが呪いと感じられるのです。しまいには、自分で自分が信じられなくなり、希望を失います。
さらに、兄を亡くして一人なった少年マーカスは、アルコール依存症の母のもとを離れ、里子に出された先にもなじめず、兄と再び話しがしたいという気持ちがおさえられなくなり、霊能者を求めて家を出ることに・・・。
苦しみを抱える三人が最後には引きつけられ ・・。それぞれに不思議なかたちで助けがやってきます。
この世界の向こう側を感じてしまった人たちは、たしかにそこに安らぎや希望や言葉にならない自由を見だしたにもかかわらず、それに反して現実社会では生きづらさを感じる、という矛盾が生まれます。
このアリ地獄のような世界の脱出口を見つけてしまうと、まるで脱出をはばむがごとくツライ体験するという ・・・ これこそがアリ地獄の仕組みそのものですよね
たしかに、あざむかれたこの世界のなかで、ホントのことを真っ正面から言っちゃおうものなら、ソク病院行きになりかねません!(ねえ、ホントは誰もここにはいないんですよ!あなたはあなたじゃないんです!なんてね・・・ 笑)いかに、この世界のカラクリがヘンであっても、口を閉ざし、隠れキリシタンのように静かに静かに自分の信じる方向に進まねばならないという・・・(苦笑)。
クリント・イーストウッドはこんなテーマの作品も撮っていたのですね。ラフマニノフの静かな音色のなかで、光をみつけだす三人の姿が印象的です。