20-09-14 ムッソリーニとお茶を

古川貴子のブログ、ヒプノセラピー/カウンセリング

予備知識なく、行きあたりばったりに観たのですが、

ジュディ・デンチやら、マギー・スミス、シェールという、私の好きな女優さんたちの宝庫で、ちょっぴりコメディタッチなこころが優しくなるいい作品でした。

舞台は、花の都 フィレンツェ、今よりもずっと、街じゅうに芸術があふれ、それを楽しむ人たちが集っている時代です。

そこに暮らすイギリス上流階級のおばあちゃまがたと孤独な少年との絆に涙がうるうるします。やがて、イタリアとイギリスとのあいだに戦争がはじまり、おばあちゃまがたの身に危険がせまります・・・

あとで調べてみたら、監督さんは誰もが観たことのある「ロミオとジュリエット(オリビアさんバージョン)」、「ブラザー・サン シスター・ムーン」、「エンドレス ラブ」、「チャンプ」、「トラヴィアータ」などの名作を世に送り出したフランコ・ゼフィレッリ。

じつはこれは彼の自伝的な物語で、さまざまな彼の作品のバックグラウンドとなった生い立ちを知ることができます。

街じたいが美術館といわれるフィレンツェの美しさにいだかれながら、毎日お茶や芸術をたしなむちょっと辛辣でおちゃめな英国のおばあちゃまがたの愛に包まれ、ゼフィレッリ監督の感性は豊かに育まれていったのでしょう。

母を亡くし、父に育児放棄された少年ルカ(監督自身です)。彼がフィレンツェで暮らす英国上流マダムたちによるあたたかな庇護のもと、大人になってゆく様子が描かれています。

この英国のマダムたちは、ムッソリーニ政権が樹立されるや、イタリアにおいては敵性外国人とみなされ勾留されてしまいます。しかし、優雅に暮らす権利を奪われつつも、英国上流マダムとしてのプライドは決して手放すことはないのです。

勾留先でのこと。夜になって見張りのイタリア人が点呼にやってくると、下着姿だったマダムたちは「きゃあ!」といっせいに叫び声をあげます。彼らの態度を無礼だと感じたマダムは、「ちゃんとノックして カム イン と言われたら入りなさい! 」とか、「下がるときには、グッナイ レディース と挨拶しなさい!」と教育までしちゃうのです(完全に召使い扱い)。彼らがマダムにちゃんと従っているのに笑ってしまいました。おばあちゃま、強し!

そんな不自由な状況におかれつつも、フィレンツェを愛し、優雅なティータイムやおしゃれをあきらめず、どんな状況下でも英国マダムのプライドを失うことなく、力強く、ときには向こうみずで、なんともチャーミングなおばあちゃまがたなのでした。

それぞれが寛容な気持ちと思いやりをもって、つながりあい、助け合い、どんな境遇でも冷静に、悲観的にならず、みんなで乗り切ってゆく様子は、まさに女性ならではだな〜と感じます。柔軟さや楽しんじゃう様子がとてもステキでした♡

こころがあたたかくなり、じんわり涙のでる作品でした。
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