戦後十数年、いまだ戦地から戻らぬ夫を待ちつづけるミセス・ハリス。
親友に支えてもらいながら、家政婦の仕事に精を出す日々。とっくにわかっている答えを直視できずに過ごしていたのですが、ついに夫の戦死を知らされることになります。
はかなげに見えたミセス・ハリスはポッキリとこころが折れてしまうかと思いきや ・・・ 意外や意外、解き放たれた表情。「これで自由だわ」と自分の人生を生きることをこころに決めた様子。
彼女は家政婦の仕事先でひと目ボレしこころを奪われてしまった美しいディオールのドレスを手に入れるため、大胆に行動を開始します。(→予告をみる)
当時のディオールはまだパリにしかお店がなく、世界中の上流階級が自分のためのたった一着のドレスを求めてやってくる超高級メゾン。
しかしそんなことなどお構いなしのミセス・ハリスは、さっさと必要なお金(今にしたら、一着のお値段は500万円ほど)を用意して、嬉々としてパリへと旅立つのです・・・が、
パリのメゾンではひどい門前払いをくらうことに。しかし、ドレスと恋におちたミセス・ハリスは、どんな難関もドレスへの恋心で乗りこえてゆきます。
ミセス・ハリスは、おそらく50代ぐらいだと思うのですが、ほんとうに無垢な乙女のような表情がとってもチャーミング。誰もが彼女の魅力に引きこまれ、気づかぬうちに見方となってしまい、そして次々にありえないことが起こる、という不思議な力の持ち主のミセス・ハリス。
彼女のチャーミングさとたくましさだけでなく、パリのディオールのメゾンの様子も面白いです。
ちょうど、「ディオールと私」という、ディオールの新デザイナーだったラフ・シモンズのコレクション発表までの日々のドキュメンタリーを観たばかりだったので、白衣のような作業着を着たお針子さんの様子や、ディールという看板の厳格さなど、今もむかしもあまり変わっていないのね〜、と感じました。
この作品のなかでミセス・ハリスの表情を見ていて、なぜかよく知っている人を見ているように感じたのです。
「誰だろう?」と考えていたら、それはこちらにいらしているクライエントさんたちの表情でした。
セラピーを受けられた女性クライエントさんたちは、どんどん無垢な乙女のような表情をされるようになります。
こころのなかのわだかまりを手放して、さまざまなルールや制限から自由になったとき、私たちはとても穏やかでありながら無垢で、そして輝きのある優しい表情になります。
ミセス・ハリスがパリにやって来て、ものおじせずにどんどん自分らしさを発揮しながら輝いてゆく姿も、まさにクライエントさんが変わってゆく様子と重なるのでした。
こころが開放されて自由だったら、ものごとはいいように流れて行くし、みんなハッピーになれる♡
そんなふうに感じさせてくれる作品でした。