「「なにごとにも”超せっかち”なんです」というクライエントのAさん。
やることはなんせ早く、そのうえ人にまかせられない性格。なぜなら、自分がやったほうがよっぽど早いですからね。しかし、なんでこんなにせっかちなのか?
彼女の深い意識を調べてみると、こんな思い込みがありました。「せっかちになって、自分が一方的にイニシアチブをとってしまえば、人からコントロールされることもなく、安全でいられる。だから、すべてを超高速で行うべし」。こんな指令が潜在意識から出ていたのですね。もちろんご本人も潜在意識のこのような意図にはまったく気づいていません。
どうやらこれは支配的な母親の影響らしく、支配から逃れるためには、なんでもとっととやっちゃうのがいちばん!と信じたのです。しかし、おもしろいことに支配されるのがイヤだったはずなのに、いつのまにか自分も人を支配していたんですね・・・「先に支配しちゃうぞ、支配されないためには」と。
まったくもって、「親のああいうところだけはイヤだ」と言っていると、まさに知らぬまに汚染されているとうか、同類になっているのがわたしたち。
これは親への抵抗が強いほど明らかです。たとえば、親が小さいときに蒸発した ・・・と嘆いていると自分も蒸発することになり、また親の浮気が嫌だった ・・・と嫌悪していると自分も知らぬまに浮気をしていたり、最たるものは家庭内暴力。あんなに虐待や暴力されていやだったはずなのに、無意識のうちに大切な人をぶったり、言葉で虐待したり、と同じ態度をとっていたりします。
わかっていたら、もちろんやりませんよね。すべて無意識です。無意識層へと刷り込まれた行動や考えは、無意識のうちに出てきちゃう。(わたしたちの行動のほとんどは「無意識」だって知ってました?何か・・・つまり、信念に乗っとられて無意識に動いたり、喋っているのです。)
セラピーをしながらたくさんの方にお目にかかっていると、当のご本人はまったく気づいていなくても、まるで親と同じパターンの生き方や行動をしている場合が多々あります。その生き方しかお手本がないのがこども時代。好きだろうが、嫌いだろうが、それしかお手本がないので、パターンとして刷り込まれてしまうのですね。そして、本人は気づかなくても、外から見ていると「あら、あら、あんなにイヤだと言っていたのに、まったく同じことしてるよ」と気がついてしまいます。
Aさんはせっかちになることによって、まんまと自分のペースでコトを運び、人には支配されないですんでいるのですが、じつは「ぜんぜん楽しくなかった」そうなのです。Aさんいわく、「四十数年生きてきて、一度も楽しくないの」と。
あらあら、どうしたことでしょうか?いつも明るくて、頭の回転が早くて、手際のいい彼女がそんなふうに感じているなんて思いもよりませんでした。
でも、それもそのはず・・・。せっかちさんは、いつも頭がクルクル高速で回転していて、まるで頭の中で「思考」というバーチャルな世界を生きているのです。パッと見て、ササッと判断する。「ああ、それってこういうことね」「ふんふん、それなら知ってる」「それって、こういう感じなのよ」・・・すべてを過去の記憶というストックから引っぱってきて、それで片づけてしまいます。それに、思考は実体をともなっていません。さきほども書いたように、バーチャルなのです。「思考」とはつながっても、「今」という実体とはなんら接触していません。
するとどうなるか・・・だんだん、だんだん人生が無味乾燥状態になっていきます。イキイキした生気が感じられません。ワクワク感もドキドキ感もなく。どうやって楽しんだり、リラックスしていいのかわかりません。
こんな症状、会社でバリバリと働いてきた男性にも見られがちです。
さてさて、どうしたらよいのでしょうか?
(その2に続く)