「ハッピーエンドの選び方」・・・なんていうタイトルを聞くと、おしゃれな街でくりひろげられるラブコメディかと思っちゃいますが、N.Y. もでてこなければ、恋人たちも見あたりません。でてくるのは、おじいちゃん、おばあちゃんのみ。それもかなり高齢の。
舞台は老人ホームで、そこで描かれるのは、なんと安楽死。つまり、自分の人生の最後をどう選ぶのか・・・というお話なのです。
発明好きのおじいちゃん、ヨヘスケルは神様からかかってくる電話機とか、薬の飲み忘れ防止マシンなど、ホームのみんなのためにいろんな器具を手作りしているのですが、末期の病と延命治療に苦しむ友人からのたっての願いで安楽死マシンを作りあげるのです。それはみんなにお別れをしてから、自分でボタンを押して旅立っていくというもの。
罪悪感にさいなまれながらも、友人とその家族のために安楽死マシンを秘密裏に使用するのですが・・・どこからかそのウワサを漏れ聞いたお年寄りから、使用の依頼が次々と。なんと、ついには最愛の妻までもが使いたいと言いだし・・・。
苦しむものを逝かせるのか、それとも自分の安らぎのために引きとめるのか・・・そんな選択を迫られます。
ベビーなテーマのはずですが、どこかユーモラスで思いやりと愛がにじみ出ています。認知症が進行しはじめて服を着るのを忘れてダイニングにやってきてしまったのを痛く恥いるヨヘスケルの奥さんのために、友人たちみんなが全裸で彼女を迎える・・・なんていう笑っちゃう場面も。ホームの風紀を乱すなと怒られるのですが、そんなことよりもおじいちゃん、おばあちゃんにとっては、傷ついた心の癒しのほうが最優先なのです。
医療が発達すればするほど、ほんとうだったらとっくに生きていないような場面でも生き続けられる時代。もちろん家族は「生きていてさえくれれば」という思いもあるけれど、本人にしてみたら迷惑きわまりなくて「自然に安らかに旅立たせてくれ」が本音かもしれません。
世界的に高齢化社会になってきているせいか、以前にくらべてお年寄りの生き方やら、旅立つまでの選択やら、そんなテーマが恋愛ものよりもずっと多くなってきているように感じられるこのごろ。自分の将来とかさねあわせながら、いろいろと考えさせられることも多いのです。
こちらはイスラエルの映画で、ヴェネチア国際映画祭でも受賞してる作品です。