セラピストも人間なので、たまにはケアが必要です。うらやましいことに、欧米にはセラピストやカウンセラーのメンタルケアをするシステムがあるのですよね。それがない日本、「自分の面倒は自分でみよ」と日夜、息抜きに余念がない(?)私です。
そんなわけで、一ヶ月にもおよぶメンタルケア旅行の終点はニース。コートダジュールのプロムナードに腰掛けて、最後の夕陽が紺碧の空と海を染めて海岸線のむこうに落ちるのを瞼に焼きつけようと、その時を待ちかまえていた。
この美しい日没と碧い海と美女(えっ、誰??)。シチュエーションがそろいすぎ!!やってくるのですよね~。ナンパおじさま&おにーさま方が、どこからともなくわやわやと。なんせ恋愛が国技(?)のお国柄。「声をかけなければ失礼にあたる」とばかりに。でも、こちらは明日には日本に帰るという身、誰にもこの至福のひとときを邪魔されたくはないのです。
「マダム。お食事はいかが?」(ここでマドモワゼルといわれたらナメられている証拠)と、初老の紳士。ちょっと肩をすくめて「英語まったくわかりましぇ~ん!」というふりをする。彼も肩をすくめて立ち去った。成功、成功。と、いう具合にやりすごす。 「シャッター押してくれませんか?」旅行者風の若い米国人男性がカメラをさしだした。しぶしぶカメラをのぞくと逆光だった。「お顔真っ暗だけど、フラッシュたく?」とお伺いをたててしまったのが運のつき。コミュニケーション可能と判断したのか、彼は私の隣にシッカと腰をおろして、あれやこれや話しはじめた。「うへ~、面倒くさいなぁ」と思いつつ、音楽、旅、仕事・・・そして恋愛と話は勝手にもりあがる。
「ボクっていつも3ヶ月しか恋愛が続かないんだよね~。なんでかな~?」(そーんなこと、私の知ったことではないでしょ~!)とおもいつつパブロフの犬状態、哀しいサガか、ついつい反射的に相談にのってしまう。「ふーん。それでそれで?」「なるほど~」・・・・・・・
「暗くなったし、食事でもどう?」ハタと気がつくと、ニースの金色の日没はどこへやら、あたりはとっぷりと夕闇に包まれていた。「アララ!私はいったい何やってんだろ?私の夕陽はどこっ??」明日は東京だというのに。ここまで来て見ず知らずの人にカウンセリングなどして、かんじんなコートダジュールの日没を見過ごしてしまうとは!なんという職業病。なんだかむしょうに腹が立って、ちょっぴり彼にやつあたりなどして(ゴメンゴメン!)そそくさとホテルにもどってきた。
おかげさまで社会復帰には時間がかからずにすんだけれど・・・。
2000 Dec 24