その1
サンクトペテルブルグでバレエを観た。はじめてのボックス席にわくわく!けれど、首が直角に横向きになって結構つらい体勢。幕間に「これで一万一千円は高いよ」とぼやきながら廊下に出た瞬間、ボックスの扉がバタンと締まって鍵までかかっている。わぁ〜ん、文句言わないからみせて!
その2
エストニアの田舎で家庭料理をいただいた。お皿がサーヴされるごとに、私は「アイタ」という。(エストニア語でありがとうの意)すると女主人は目を細めて嬉しそうに頷く。それ以来、「あ痛っ!」と悲鳴をあげるたび、「空いた!」と空席に走りよるたび、自動的に彼女の微笑みにリンクしてしまう。
その3
今まで世界の名だたる美術館を渡り歩いてきたけれど、今回のエルミタージュは別格。飲まず食わず寝ずに観ても6年はかかるとか、途中で迷ったら一生出て来れないとか・・・いわくつき。「とにかく何が何でも一番が好き!」というロシア人の気質はエカテリーナの時代から変わらないのね。
その4
頭の中は,あのテトリスのBGMがなりっぱなし。そう!あのタマネギ頭のワシーリー寺院です。(テトリスのはじめに出てくるの)ビデオに撮りながらノーテンキにBGMを歌ってたけど、イワン雷帝がこれ以上美しい寺院を作らせないように設計者の目を潰したとか・・・ オ〜コワ。
その5
ソ連崩壊時、レーニン像がクレーンにぶら下がってむげに撤去される様を憶えている。共産党の象徴は徹底的に忌み嫌われている。でも、片田舎にまだレーニン像が残っていた。が、頭がない。かわりに電球がついている。声にださねども、ロシアの人の鬱積したおもいがにじみでている。
その6
リトアニアで「日本のシンドラー」といわれている、旧杉原領事館を訪れた。ゲシュタポも怖れず、ここから六千枚の日本通過ビザがユダヤ人に渡された。リトアニアを去る汽車の窓からも、書いては投げていたとか。(哀しいことに、彼は帰国後免官された)これが、そんなに昔の話ではないことに改ためておどろかされる。
その7
ロシアというと異口同音にコワそ〜、とか、クラそ〜と言われるけれど、どーしてどーして。赤の広場なんて有名ブランドがきらびやかに軒を連ね、オーブンカフェは深夜まで、マックはいたるところにという急変ぶり。日本でチョンマゲのとれた時代もそうだけど、時代の波は突然すごい勢いでやってくる。
その8
四月の下旬頃、朝近所を散歩するとタンポポの綿毛のようなものがたくさん飛んでいた。友人いわく「ブラッシングした犬の毛でしょう」。サンクトペテルブルグでも「これはゆうに犬百匹は丸裸でしょう!」というぐらい街中にとんでいた。どうやら真犯人は「菩提樹」らしい。ホッとした。