砂粒のはなし

"その人間関係を失くしたとき、まるで小さな砂粒をぽろりと砂浜におとしてしまったような気持ちだった。たくさんの砂粒にまぎれてもう二度と探しだせないような、あるいは波にさらわれて途方もない遠いところにいってしまったような。・・・やるせなさと深い後悔。せめてどこだかわかるところにいてくれたら・・・。そして、その砂粒がかなりの歳月をへて、ひょんな偶然が重なりあって手元に戻ってきたときの驚き。奇跡に目をみはった。世の中には何十億という人がひしめきあっているけれど、もしかするとほとんどは幻かもしれない、とそのとき思った。幻の中に私にとっての実在の人物がちりばめられているような感じ。幻に惑わされることなく、自分の人生の登場人物をしかと見分けること、それは本当に自分自身に正直になることかもしれない。そんなことを考えると、今自分のまわりにいる愛する人ひとりひとりが心からいとしくなった。「ああ、たくさんの砂粒の中からちゃんと見つけ出せてよかった。そして、見つけ出してもらえた」って。"