♪15、16、17とぉ〜、私の人生暗かったぁ〜♪ 、まさにこんな感じでしょうか? 入り口にかかっているビュフェのポートレート写真は恰幅がよくて、いかにも鷹揚な紳士然りとした雰囲気を醸し出しているのですが、彼の作品はウソがつけません。才能あふれて15才で国立美術学校に入学したものの、母親を無くして彼の描く自画像はまるで強制収容所の囚人さながら。ガリガリ、カツカツで殺伐としているのです。写真の彼の大きな身体は、そんな傷だらけの心を守るための鎧のよう。そして、空虚な心を感じる暇を与えないがために、絵に没頭し続けたのかもしれません。彼の一生は、どんな栄誉をうけようとも、富を得ようとも、美しい土地を旅しようとも、深い悲しみのフィルターに覆われているようです。だからこそ、表現される凄まじいまでの個性。曲線をすこしも許さないナイフで仕上げた真っ黒な線描、たたきつけられるように塗り込められた空間。そんな中、一枚だけ、黒い縁取りを使わない作品がありました。おそろしく穏やで柔らかい色彩の風景画。残念ながら、これはビュフェじゃない。まったく伝わってくるものがありません。たとえ内面にどんなものが秘められていようとも、正直にさらけ出されたところに感動が生まれるのですね〜。
ベルナール・ビュフェ展
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