お茶の間シネマトーク 「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」

女性写真家のドキュメンタリー・・・・と、いうよりも劇場版写真集。

たぶん、彼女の写真を見ると「ああ、これ知ってる!」という知名度の高いものがいくつもあります。とくに、ジョン・レノンが殺される数時間前に撮影されたヨーコとの最後の写真。構図の大胆さとはうらはらに表情がとても自然なふたり。わたしも、「この作品は、誰のだろう?」ととても気になっていたものです。

ファッション誌の表紙やグラビアというとヘルムート・ニュートンの作品が頭に浮かびますが、ハーパースバザー誌でのアニーの作品はさらにドラマチック。インパクトがあります。彼女の写真は被写体が自然体であっても、独特な存在感を醸し出しています。彼女のイメージどおりに空気の色を染めあげてレンズにおさめてしまうような。

インタビューの中で、彼女にかかわる誰もが口をそろえて、「仕事に対する姿勢はすごく真剣」、「あそこまでしなくても、いくらでもできるはず・・・」というような発言をしています。でも、撮影している本人を見ると、いたって気楽で飄々としているのです。力がぬけて「我」がなくなってしまってる状態。結局、芸術にしろ、どんな仕事にしてもそうですが、自分を捧げつくす、すると勝手に高いところのドアが開いてしまって天につながってしまうようです。

五十をすぎて子育てに目覚め、今や三児の母に。その生き方の柔軟さはいつも自分の気持ちに正直な証拠でしょう。女性というよりも人として魅力的です。