ふだん読み終わった本は、ほとんど処分してしまいます。手元に残るのは、何度も読み返したいわたしにとっての「よりすぐり」だけ。
梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」は、いつからか本棚の片隅にありました。これは、中学生のマイが、ふとしたことから学校に行かれなくなり、田舎暮らしをするおばあちゃんのところで過ごす一ヶ月の物語。「西の魔女」と呼ばれるおばあちゃんは、魔女修行と称して丁寧に暮らすこと、そしてなんでも自分で決めることをマイに教えてゆくのです。
「がばいばあちゃん」のように「おばあちゃんと孫」って、親子よりも少し力が抜けてて、経験から豊な教育ができるものですね。
映画化された「西の魔女が死んだ」を観ていると、デジャヴ体験。わたしがこの小説で読んだイメージがまったくそのままが映像としてそこにあって、すべてを知っている感覚でした。
残念だったのは、物語のあらすじをサラリサラリとなぞるだけになっていること。いつも寛容で、無条件の愛をふり注ぐおばあちゃんが、いちどだけマイに激しく怒ってしまう場面があるのです。映画の中ではその理由についての描写はほとんどなかったのですよね。
おばあちゃん役のサチ・パーカーは、あのシャーリー・マクレーンの娘さん。もともとは、シャーリーにまわってきた役だったとか。サチさんは、たしかまだ四十代。幼い日々を日本で過ごした彼女は、なんの違和感もなくステキなおばあちゃんになっていました。
ふざけて友人たちに「東の魔女」と呼ばれているわたしは、ふと夜中にクッキーを焼く性癖があるのですが、この「西の魔女」も夜中にふとクッキーを焼いておりましたよ♪
小説を読んでいないとわりと淡白に感じる映画かもしれません。でもエンドロールでは、すすり泣きがあちこちから聞こえてきました。
「何気ない日常をていねいに生きることこそが、魔法をもたらしてくれる」・・・そんなことを教えてくれるハートがあたたかくなる一本でした。
涙壷度:★★★☆☆ (ハンカチ必携!)