もっとゆっくり見ていたい・・・

「また、あの河口湖の一竹美術館を訪れたいな〜」と思っていたところ・・・舞いこんだ一葉の美しい葉書。久保田一竹さんの東京で行われる個展の招待状でした。

一竹さんとは、60歳をすぎて「一竹辻が花」という独自の染め物の世界を確立され、世界中でたくさんの賞をとっていらっしゃる方。少年の頃に博物館で目にした「辻が花」という染め物の切れ端の微妙な色合いと、戦時中シベリアで見た燃えるような夕日にインスピレーションをえて、40代からこの世界に入られたというからびっくりです。2003年に亡くなられていますが、わたしがはじめて「一竹美術館」を訪れたときにはお庭にいらっしゃって「こんにちは」と声をかけてくださったのを思い出します。とてもとても静かで穏やかな雰囲気の方でした。現在は、二代目の久保田一竹さんがまだ未完の連作の制作を継承されています。

今回の個展はフラワーデザイナーの川崎景太さんとのコラボレーション。河口湖の美術館では富士山をモチーフにした連作が展示されていましたが、こちらではまた趣きがちがう「花」をテーマにした作品が数多く展示されていました。

一代目の一竹さんは「いぶし銀」のような作風でしたが、二代目の一竹さんは作品に「華麗さ、華やかさ」が感じられます。でも、どこから二代目か制作されたかは年代を見ないとまるでわかりません。二代目一竹さんは会場にいらしゃいましたが、まるで僧侶のような雰囲気の方でした。

「辻が花」は絞り染めなのですが、その手法も気が遠くなりそうなもの。そこからどうしてこのような微妙なグラデーションや細かいモチーフ、そして深い色合いが生まれるのか・・・。どこかこの「一竹辻が花」には時間をわすれさせ、悠久の流れにのみこまれてしまうような不思議な感覚を感じさせてくれます。

1月12日まで銀座の松屋でご覧になれます。素晴らしいです!お時間があったら是非どうぞ。