お茶の間シネマトーク「やさしい嘘と贈り物」

目覚ましで決まった時間に起床、毎朝おなじように身支度して、共同経営しているスーパーへ向かい、仕事をするというよりは同じ場所に坐って絵を描いて一日にをすごす・・・。そんな「かろうじて」生きているような毎日を送るおじいさんのロバート。

そんなロバートに、ひょんなことから彼女ができるのです。名前はメアリー。それはそれは積極的で、出会って二三日で二人の仲は急発展。ヨボヨボだったロバートの顔にみるみる生気が漲りはじめます。

それもそのはず、ロバートの記憶にはないけれど、この突然ふってわいた彼女はもともと彼の妻。おそらく彼はアルツハイマーか認知症かで、過去の記憶をなくしています。記憶をなくしても、やっぱり同じ人に恋をするのでしょうか?

そんな記憶をなくした老いらくの恋は素直で初々しくて、なんとも微笑ましい。そして、一瞬一瞬をいつくしむようにすごしてゆきます。

しかし、記憶のないロバートからすると、メアリーが他の男と話しているのを見て嫉妬にさいなまれたり(他の男は、じつは自分の弟)、メアリーがちょっと出かけているだけでパニックにおちいったり。

このロバート目線で語られる物語、みていて思いあたるフシがあります。まるで、過去(世)の記憶をなくしたわたしたちのよう。自分のかつての夫や妻だった人と、はじめて出会ったように恋をしてみたり(ロバートと同じように、「ずっと昔から知っているようだ」と感想をのべます)、そして完璧に安全な場所に包みこまれているにもかかわらず、全体をみわたすことができないので人生に起る小さなことで常にパニックになったり不安になったり。あはは・・・わたしたちって、みんなある種アルツタイマーであり認知症でこの世に送りこまれているのだな〜と笑ってしまいました。

メアリーがロバートをなだめるように、神様もわたしたちをみて、大丈夫!大丈夫!そんなにあわてたり心配しなくても。すべてはちゃんとうまくいっているから。わたしがちゃんとそばについているから。見守っているから。・・・と言いたくなることでしょう。それでも、わたしたしはあ〜だ!こ〜だ!と常に心配していて、おそろしくゆがんだ目線でものごとをみているのかもしれません。

こんなふうに全体を見渡すことができずに生まれてくるわたしたち。おそらく、こんな感じを楽しみたかったのですね。子供のころ、むずかしいゲームほど楽しかったように、やりがいを求めているのでしょう。

だったら、Take it easy! いっそ、肩の力をぬいて楽しみましょう♪