気づきの日記 「”あなたのためだから”・・・の甘いワナ」

TVコマーシャルにこんなのがありました。

スウィーツを食べようとしている女の子に友人たちが、
「たしか、ダイエット中だよね?」と声をかけます。
「じゃ、甘いものはよくないね。食べてあげる!」といって取り上げるのです。

そのときのひとことが・・・「あなたのためだから」。

「あなたのためだから・・・」って言われると、なんだか「気遣ってもらっている」ような、「大切にされている」ような、そんな錯覚に陥ります。が、そこはかとなく相手のエゴが感じられる言葉でもあります。

これと似ているのが、「あなたのことが心配なのよ」。心配だから・・・「それはやめてくれ」「わたしの言うことを聞いてくれ」と。「心配だ」という言葉に人は弱いものです。小さい頃から「人に心配をかけるのはよくないことだ」と教えこまれ、この言葉を聞くなりスンナリ相手の要求を受け入れてしまったりします。そして、「ああ、気にかけてもらっているんだ。大切な存在なんだ」とちょっと嬉しくなったり、おもいやってくれる相手に感謝する場合もあるでしょう。

しかし、ほんとうに「あなた」、つまり相手のことが心配なのでしょうか?

否!これはつきつめれば、こういうことです。「あなたが好きなようにふるまうと、わたしの心が乱されたり、パワーを奪われるの。そんなことは耐えられないから、勝手なことをするのはやめてちょうだい」という、相手への気遣いどころか、自分自身を気遣った言葉なのです。わたしが不快に感じることを人はすべきではない、ということを遠回しに表現したわけです。

「心配」という言葉をくっつけると、相手をコントロールしやすくなります。戦ったり、支配的な顔を見せることなく、「良い人」「やさしい人」として、まんまと思いどおりにコトをすすめてゆくことができるのです。もっとも、「心配」という言葉を使っている本人も、それが「心配」などではなく「コントロール」だと気づいていない場合も多々あります。自分を守るために無意識のうちに使っているのですね。

子供のときには、このひとことにのせられて、自分の自主性を捨て去り、親の鋳型にまんまと納まってしまう子供も多々みかけます。子供は、相手のコントロールをすでに見破っている場合もあります(子供は鋭いです)。それでも好きなお母さんを嫌な気分にさせたくない、嫌われたくない、という一心で我慢しちゃったりします。すでに顔色をみる習慣がついているわけです。不条理だけど、愛されるためにこの言葉を受け入れるのです。

これは、夫婦間で相手を意のままにしたいときにも使われます。直球で何かお願いして無下に断られよりも、心配の仮面をつけて、うまくコントロールしちゃうという方法。つまり、先ほども書いたように「なにごとも自分の思い通りになってあたりまえ」という考えがその人の根底にあり、自分の満足のためには相手を都合のいいように扱ってもよいのだ、と感じているのです。

「ふ〜ん・・・そういう人もいるのか・・・」とひとごとのように読んでいるあなた。もしかするとご自分でも気づかずにちゃっかり相手をコントロールする癖がついているかもしれません。

ご自分のコントロールの度合いを調べるには、日常の中で「すべてのことにサレンダーする」というチャレンジをしてみてください。サレンダー、つまり「身を任せる」こと。やってくるもの(人や物事、出来事)に対して、すべてにOKを出す、受け入れる、身を委ねる。そのときに、意見したくなったり、抵抗したくなったり、逃げ出したくなったり、戦いたくなる自分を観察します。本来だったら、この場面こそコントロールが顔を出しているときです。いったいどんな場面にあなたのコントロールは顔を出すのでしょう?

これはとっても受け身的な生き方に見えますが、やってみると案外ご利益が多いことに気がつきます。簡単に欲しいものが手に入ったり、起ってほしいことがスムーズに起ったり、相手が思うとおりに動いたりします。ということは、わたしたちはどれだけ「しなくてよい抵抗を日常的に繰りかえしているのか」「ムダな努力をして戦っているのか」ということです。すごいエネルギーのムダづかい。自分の人生がうまくゆかない・・・あらら、気がついたら邪魔をしていたのは自分だったの〜!?ということになります。

ほんとうは力を抜いてゆるゆる生きていると、天がちゃんと必要なところに導いて行ってくれるようです。ヘタに手をだすよりも、大きな流れに身をまかせる。信頼する。つまり「エゴ」「我」を捨てなさいということですね。川の中をスルスル流れて行く感じ。

「あなたのため」とか「あなたのことが心配だから」を使いたくなったとき、自分はいったい何を避けたいと思っているのか、何を守りたいと思っているのか、何を怖がっているのか・・・自分の心をのぞいてみると、大きな力(流れ)と自分との関係を改善することができます。そうすると、まわりの大切な人をコントロールすることなく、尊重しながらお互いに心地よい関係を築いてゆくことができるようになることでしょう。そして、なによりも自分の行く手を阻むこともなくなるのですね。その後にご自分の人生に何がやってくるのかを見てみませんか?