画家さんだったの?!

国立新美術館に行ってきました。写真家としては有名すぎるこの方、「マン・レイ展」です。未公開作品を含め写真、絵画、版画、彫刻など400点余りと、数種の映像も上映されているみごたえのある回顧展。

びっくりしたのは、彼はもともと画家だった!ということ。そして、自分の作品を記録する目的で写真を撮りはじめたそうです。経済的な理由から写真でお金を稼いでいるうちに、写真家としての顔のほうがどんどん有名になってしまったという皮肉な結末。しかし、彼は人生の最期の最期まで画家である自分にこだわっていたようです。

おもしろいですね。ぜったいこうしてやる〜!という力みがない「写真家の顔」はすんなり世間に受け入れられ、世界的にまで有名になってしまうとは・・・。やっぱり力みやエゴは百害あって一利なし、ですね。

写真って不思議なもので、ただシャッターを押すだけなのに撮り手がしっかりと映し出されてしまいます。自分の経験からも、たとえば旅に出て写真を撮っているとき、たっぷり時間があって対象物とつながりながら本当に撮りたいものを撮った写真と、時間がなくてとりあえずバシバシ撮った写真とはまるで違うのです。雲泥の差。「心のこもってない」写真は、やっぱりうったえかけてくるものもなく、いくら綺麗にとれても味気がありません。

マン・レイがパリに住んでいた頃の恋人、あの多くの芸術家が愛し、こぞって作品にした「モンパルナスのキキ」を撮った写真はやっぱり美しいし、なによりも存在感があります。彼の情熱、憧れ、愛情、崇拝・・・のすべてがこめられた作品。そして、やはりこれらの作品によって、マン・レイの写真家としての地位も不動なものになっているのですね(芸術家にとってミューズの存在は創作の源泉そのもの。シャガールのベラとか、ダリのガラとかね!)。キキの背中がバイオリンのモチーフになっている作品と、彼女の目からころがり落ちる完璧な涙を撮影した作品、どちらもあまりにも有名。(それにしても、名だたる芸術家にこぞって愛されたキキって、いったい何が魅力だったのでしょうね?!)

マン・レイの絵画群や映像はかなりシュールですが、女性のポートレート写真などは当時独特の雰囲気があってステキ。どうぞたっぷりとお時間をとってお楽しみくださいませ。六本木で9/13までで〜す!(夕刻、ねらいめ!)