お茶の間シネマトーク「小さな村の小さなダンサー」

ジミな中国映画かと期待薄で出かけましたが、とてもよかったです!

これは、リー・ツンシンという中国出身の世界的なバレエダンサーの自著をもとにした実話。彼は中国の貧しい農村の大家族に生まれ、ひょんなことから毛沢東の文化政策で北京の舞踊学校の英才教育へ。またまたひょんなことからアメリカへの研修生に選ばれ、さらにひょんなことから怪我をしたプリンシパルの代役として踊ったドンキホーテが大喝采。数週間のアメリカ滞在は彼の人生を根底からくつがえします。結局、あまりのカリスマ性が災い(?)して祖国を捨てるはめに。

彼は「ひょんなこと」だけで世界的に有名になったわけではありません。もともとはひ弱で泣いてばかりいる落ちこぼれ。アメリカのバレエ団が北京の舞踊学校に視察に来たときも「彼らはアスリートであって、ダンサーではない」と言い切られます。つまりスパルタ教育で技術はあるけれど、バレエ的情緒がない、ということなのです。それでも、彼はぐんぐん変わりはじめます。家族への愛、恩師への愛、恋人への愛、アメリカという新天地への愛、そして自分の可能性への愛によって。

結局、祖国を捨ててしまった彼は家族への切ない想いをこめて舞台に立つようになり、それが彼を単なるアスリートから真のダンサーへと花開かせることになります。

リー・ツンシンを演じられる役者さん選びに難航したそうな。そうですよね。カリスマ的なバレエを踊れなければなりません。それをみごとに演じているのが英国バーミンガム・ロイヤルバレエの現役プリンシパル、ツァオ・チー。彼の踊りはすばらしかったです。身体の軸がしっかりしているのでしょうか?どんな動きをしてもピタっときまる、ぶれない美しいシルエット。バーミンガム・ロイヤルバレエと言えば、デビット・ビントレーという最近日本でも活躍している芸術監督がいるバレエ団。ビントレーの振り付けでツァオ・チーの踊りが観たかったな〜。

バレエを観るときは女性のプリンシパルダンサーしか観てこなかったけれど、ツァオ・チーの踊りをみてすっかり魅せられてしまいました。

リー・ツンシン自身も予期していなかったであろう彼のUps and Downs たっぷりの半生(両親との決別、劇的な出世、大使館との亡命劇、波乱のロマンス)と、さらにバーミンガムバレエ団の美しきプリンシパル、ツァオ・チーのナンバーが堪能できる映画。おススメです。

涙壷度:★★★☆☆ (ハンカチ必携)