お茶の間シネマトーク 母娘の葛藤 「愛する人」

わたしたちの人生は、幼少の頃の両親との関係を色濃く反映し続けます。とくに、命をはぐくんでくれた母親との関係。セラピーセッションの中でも、母親との問題は定番中の定番。たいてい心や身体の問題の根っこは母との関係に帰着するといってもいいほどです。

この「愛する人」という映画は、そんな母と娘の心の葛藤を通して、人を愛すること、自分を愛すること、そして愛を受け入れること、がテーマになっています。

愛するがゆえに娘をコントロールしようとする母、それに抵抗し怒りから心を閉ざしてゆく娘。これぞ、日々のセッションのおきまりのパターン! また、自分を養子に出した母への恨みから女性全体を嫌悪し、満たされない愛情をどうにかしようと手当たりしだい男性を誘惑しようとする女性(これ、ぜったい満たされません)・・・これもよくあるパターンです。

しかし、人生の途上では、かならず傷をいやすチャンス、助けが用意されていることも事実です。

この物語は三つのストーリーが同時に進行してゆきます。14歳で妊娠し娘を手放した母の苦しみ、母に見捨てられた傷から愛を信じない娘、そして子どもができずに養子をとることに必死なカップル。この三つはおそらくこうつながるだろうと予測していたのですが、以外な展開に・・・。

監督さんは、なんとガルシア・マルケス(ノーベル賞作家)の息子さんロドリゴ・ガルシア。アネット・ベニング演じる罪悪感いっぱいのギスギスとげとげの母親が愛の中で再生してゆく様子が美しいです。この映画を観ることで、「母からの愛」を改めて気づかされたわたしでした(涙)。

涙壷度:★★★☆☆(静かに涙)