お茶の間シネマトーク「カズオ・イシグロの世界 "わたしを離さないで”」

日本国民総ストレス障害・・・とさきほどTVのコメンテーターが話していました。ホントです。あの震災の映像を繰り返し見ているだけでも、心にはかなりの負担です。

そして、今のご時勢、おいしいものを食べたり、楽しいことをするのも気がひけてしまうところがあります。住むところがない、ゴハンさえない人がいっぱいいるのに・・・と。

でも、日本国民全体があらゆることを自粛していると、こんどは経済がたちゆかなくなります。だから、今こそどんどん稼いで、どんどん使って、経済を元気にして、そしてじゃんじゃん義援金を送って、復興に手をかすこと。ですよね!

そんなわけで、二週間ぶりに仕事以外のおでかけ。カズオ・イシグロ原作の映画「わたしを離さないで」を観てきました。う・・・ん、ちょっと今のご時勢にはストーリーがヘビーでした。

でもカズオ・イシグロなので、早く観たかったのです。

昔、貴族とそこに仕える執事を描いた「日の名残り」という映画がありました。執事役のアンソニー・ホプキンスが素晴らしくって大好きな映画です(レクター博士とは思えないひかえめな紳士ぶり!)。上映後エンドロールをぼ〜っと観ていたとき、原作者の名前が日本人「カズオ・イシグロ」であることに気がつきました。

びっくりしました。こんなこてこての英国の貴族社会を描いた作家が日本人?!と。そのあと知ったのは、カズオ・イシグロは長崎に生まれて両親とともに英国に移り住んだということ。彼の短編はいくつか読んだことがあるのですが、アメリカ、ハンガリー、日本などさまざまな国を舞台にした独特な感性の作品です。

そしてこの「わたしを離さないで」は彼がかつて受賞した英国のブッカー賞の候補に再び選ばれた話題作。

イギリスの厳格な寄宿学校。ここで暮らしているのは裕福な家庭のこどもたち・・・ではなくて、ある目的のために秘密裏に管理されているこどもたち。かれらは、ある年齢に達したらドナーとなって生を終えることを運命づけられているのです。しかし、ほんとうに愛し合っているものたちにはしばらくの猶予があたえられると・・・。運命を受け入れながら生きるひとりの男の子と、彼に恋するふたりの女の子。

ショッキングな内容ですが、おさえめな映像のトーンがどこか遠いところのことに感じさせることと、この三人の役柄がたんたんと演じられているところがまだ救いでしたよ。

震災のあとでもあります。今のところは、アンソニー・ホプキンスがステキな「日の名残り」のDVDからおすすめというところでしょうか・・・。