先日、「エル・ブリの秘密」という映画を観ました。
エル・ブリとは、世界でいちばん予約がとれないといわれた伝説のレストラン(残念ながらすでに閉店しています)。45席しかないにもかかわらず、年間200万件もの予約が殺到したとか。わあ〜、宝くじ並の難関。そのお店のかつての姿のドキュメンタリーです。
エル・ブリは一年の半分ほどしか営業しません。あとの半分は、その年のメニューを創作するための時間なのです。
それだけ時間があればのんびりやっているのかと思いきや、50名近い厨房スタッフが毎日コマネズミのごとくくるくると走り回り、常に緊迫した空気が漂います。まったく新しいものを創り出すって、それだけの真剣勝負なのですね。
そして厨房は研究室さながら。お料理を生み出しているというより、化学実験の様相。いかに使用している食材をくらますか、びっくりする形状、食感を生み出すか・・・。おいしさというよりは、驚きを追求しているようです。だから凍らせたり、すりつぶしたり、ジュレにしたり・・・食材は原型をとどめません。
日本の食材もけっこう使われていて、マツタケ、ユズ、ミカンなどはそのまま日本語でした。お料理も懐石にならってか、ほんの一口。ふだんナイフとフォークを使いなれた人たちが指でつまんで食べられるのです。また、レストランのお庭には熊手で砂紋を描いたり、かなり日本を意識している感じです。しかし、お料理は液体窒素で固めたり、オブラートでくるんだり・・・かなり不思議ちゃんな世界。
この映画を観たらさぞおいしいものが食べたくなるかと思いきや、ぜんぜんでした。なんせ観ていて想像できないのです、お味が。すご〜くアートしているけれど、そこまでやっちゃっておいしのか?
昨日、ちょうどNHKの番組で「食と化学の融合」をとりあげた番組をやっていました。いまや世界的においしさというものを科学的に解明して、新しい調理法を生み出そうというもの。また、化学技術を食に導入することも進んでいます。
この食材は何度で調理するといちばんおいしく感じるかなどを科学的に解析して、それをふまえて料理人が調理するというように、京都では研究室とお料理屋さんがコラボして「おいしさ」を追求しつつ和食文化を広めようとしています。
今のこどもたちはファストフードやコンビニ弁当でとりあえずお腹を満たして塾や習い事に通うような忙しい日常。でも、ていねいに作られたものを五感をふるに使って味わいながらいただくという体験は、食べたものがしっかりと全部栄養になってくれそうな感じで大切ですよね。
こんな映画や番組にふれると「へえ〜、料理人って思ったよりもクリエイティブでおもしそう!かっこいい!」と、料理人志望の若人が増えるかもしれませんね〜。
しかし、エル・ブリのあの不思議なお料理の数々、いったいどんなお味がしたんだろ〜?