ココロがメルトダウンする前に

家族や友人がココロのバランスを崩したら、精神科や心療内科に連れていきますか?

お医者さまに診て頂くことはまったく悪いことではないのですが、最近とても気になることがあります。

たった5分ほどの問診でウツなどのクスリを処方され飲みはじめ・・・ピークタイムにはその痛みを和らげるのに効果はあると思うのですが・・・しばらくして別の問題が勃発するということ。

それは、クスリをやめたいのにやめられないこと。もとの問題はさしおいて、このクスリとつきあっていくことにウンザリしていらっしゃるクライアントさんからのご相談が最近、とっても多いのです。

そして、これらのクライアントさんの心理状態はクスリをとる前とはまた違った、かなり危険な不安定さをあらわしています。

クスリをとりはじめると脳内ホルモンが変化し、気分は少しよくなるものの、感性が鈍くなり、世の中がカラーからモノクロになったように感じます。そして意欲がなくなり、世界にかかわる気持ちも萎えはじめます。悪くすると性格まで変わってしまうことも。またクスリのせいで太りやすくなったり、顔つきも変わってしまい、そのことだけでも自己イメージが大きく低下し、自分に対してガックリきてしまうことも。でも、クスリをやめるのは不安すぎる。またあんな気持ちになったらどうしよう・・・と。

このクスリの引き起こす負のサイクルが、もしかすると自殺率を上げているのか、とさえ感じてしまいます。

しばらくすると、症状にフタをして隠しているだけで(つまり、ココロの中で完全にメルトダウンした危険なものに水をかけたり、おおいをするのではなく)、本当のウツの「原因」に向きあっていなかったと気がつき・・・とようやく自分の心と正直に向き合うセラピーが始まるのです(危ない燃料棒はちゃんと取りだして、どこかに葬ってあげなくちゃ)。

もちろんクスリの量やとる期間に細心の注意を払い、心理療法も並行すればより効果もあり、安全なのでしょうけれど、なかなかそこまのケアが行きとどかないのが現状です。そして、クスリに頼りきったことから心理的に常習性が生まれ、やめるにはかなりのエネルギーが必要になります。

クスリをとって症状が和らげば一件落着のように見えるものの、じつは痛みにフタをして抑圧しただけで、得体の知れないモヤモヤはまだそこにあるのですね。それを「隠す」ことよりっも「放出」させることが治療にはいちばん重要なのです。

ココロの問題には、安易なクスリの処方だけでなく、もっと時間をかけてココロとていねいに向き合う細やかな心理療法が必要だと感じます。

また日常でも、ご本人が信頼できる人に親身になって聴いてもらうなど、シリアスになってしまう前のちょっとしたケアも大切です。自分のココロをありのままに表現して受けとめてもらい、共感してもらうこと。

たった「一人だけでも」、真剣に、共感的に、耳を傾けてくれる人がいるだけでクスリに頼りきるリスクは減らせるのではないかと感じるこの頃です。

そして一見、非生産的に見える「長々とグチを言いあう」ようなおしゃべりタイムも、じつはココロの健康にとっては欠かせないものです。

たまにはおいしいお菓子でも買って帰って、ムダ話を楽しむおしゃべりタイムでリラックスしてみてはいかがでしょうか?
Smile

「気づきの日記」バックナンバーはこちら: 古川 貴子/心理療法家・ヒプノセラピスト