お茶の間シネマトーク「ゼロ・グラビティ 〜 ホンロウされる私たち」

宇宙空間でホンロウされている・・・宇宙船でパニックになっている・・・91分間、そんなサンドラ・ブロックだけを見ることになります。たま〜に、ちょっとだけノーテンキなジョージ・クルーニー登場。

これは宇宙空間に投げ出された宇宙飛行士の女性(S・ブロック)が、たった一人で生還を試みる物語。

無重力に翻弄される姿こそ、この現実にホンロウされてコントロールしようともがく私たちの姿そのものである、と監督。なるほど・・・。

印象的だった場面は、宇宙船の中でたったひとり恐怖にうちひしがれているサンドラに、ジョージ・クルーニーの幻想が現れて言葉をかけるところ。

そのセリフじたいは忘れてしまいましたが、伝えていたのはこんなことでした。「きみはいつも過去の罪悪感や怖れにとどまって、心を閉ざしている。今にいないんだ。もっとリラックスして、心を開いて、ここにいるんだ。今できることをするんだ」というようなこと。そう、彼女は幼い娘を失った悲しみと罪悪感の中にいつもとどまっていたのです。

ここでがっつり、彼女のなかの「生きるモード」のギアが入ります。心が開くとそこに叡智がやってくるわけです。

私たちも「怖れ」にとりつかれると、その怖さのあまり心を閉ざしてしまいます。すると、その怖れがどんどん大きくなって、まるで漆黒の無限の闇、宇宙空間のなかに投げ出されたような孤独や無力さ、見捨てられたような気持ちになってしまう。でも、「怖れ」の幻想のなかではなく、心を開いて意識を「今、ここ」におくことによって、ちゃんと助けがやってきているのに気づきます。「大丈夫な自分」といつもしっかりとつながっていること、愛にささえられていることを感じはじめて、さしのべられている助けの手をしっかりとつかめるようになるのです・・・そんなメッセージを感じました。

PS てっきり、無重力空間をつくって撮影したのかと思ったら、なんと人をワイヤでつり下げてカメラを回しながら撮ったとか。完璧に無重力、宇宙空間に見えます。・・・まるで、私たちの意識が創りだした人間ワールドのセットのようにパーフェクト、まさにホンモノに見えました。