私たちは、「自分に欠けている」「足りない」と思うものを日々調達する旅を続けています。
それは、お金であったり、知識であったり、資格やステータス、あるいは自分をもっと素敵に見せてくれる恋人であったり・・・。
これは自分のこころにポッカリと穴があいていて、まるで傷口がさらされているように感じているため、その穴を満たしてくれる「誰か」や「何か」をたえず探し求めているわけです。
そのポッカリあいた穴をピタリと満たしてくれたり、なんだ穴なんてなかったんだと忘れさせてくれるのが、理想の相手、恋する人となります。
この穴を埋めてもらうにはあの人じゃなくっちゃ!あの人が必要だ!と頑張るわけです。頑張るというのは、背伸びをしてもっと素敵である自分を演出することで特別になって注意をひこうとします。
いったん相手を手にしたら、絶対逃げられてはいけません。またあの穴があらわになったら、自分はとてもみじめな気持ちになるし、そんな自分を認めたくないからです。まさに、相手が自分を愛してくれることが生存にかかわるようにさえ感じてしまうわけです。
しかし、手に入れた安心感はつかの間。・・・こんどは相手との戦いがはじまります。なぜなら、自分の穴にぴったりであっていいはずの相手は、勝手に振る舞いはじめるからです。
これは相手が意地悪して勝手に振る舞っているのではなく、感じるままに自分らしくありのままに、ふつ〜に生きているだけのです。
私たちはその人のある一点が自分のニーズにあっていると、あたかも全部が自分の思ったとおりであると勘違いします。相手のすべての姿を知るわけもなく、近づけば近づくほど実際の相手の姿、自分にとっては「相手の未知の部分」が姿を現すわけです。
また同時に、近しい相手は自分の隠された意識を「鏡」のように映しだす役割をしてくれます。そもそも「自分は欠けていて、どうしようもない」という思いから相手を求めtいるので、相手の中に見えるものはさらに自分が隠し持っていた劣等感で、それを強化してくれるものとなります。例えば、相手のなにげない言動に自分がひけめを感じたり、大切にされていないのではと不安になったり・・・「欠けている」証拠をいっぱい見つけてしまうのです。
この相手がいれば自分のこころの痛みは癒されると思ったのに、残念ながらその痛みをさらに強化することになってしまいます。また、相手の注意をひくために本来の自分ではない自分をやり続けてきたツケもまわってきます。自分がその関係の中でどんどん息苦しくなっていくのです。
私たちは「足りないもの」があると本能的に外に向かって探しに出かけますが、本当は外の世界から得られるものは何もないようなのです。
自分の中に「あった!」と思うものが、しっかりと外に現れる・・・・つまり、まったく逆のメカニズムなのですね。
だから、自分の中にポッカリと穴を感じたら、まず自分がその穴にちゃんと向き合ってあげる必要があります。人に絆創膏の役割を押しつけるのではなくて、自分自身がちゃんとケアしてあげること。
「ああ、こんな痛みを持っていたんだね〜。ずっと痛かったね〜。つらかったね〜」と痛みがあることを認めて、共感して、そしてどうして欲しかったのかその痛みに聞いてあげること。「ああ、もっと優しくしてほしかったんだね〜」「一緒にいてほしかったんだね〜」「そのままでいいって言ってほしかったんだね〜」とその声をちゃんと汲み取ってあげるとこ。それを与えてあげるのは、今でもぜんぜん遅くないのです。
私たちが自分の中に「痛み」があることにちゃんと気づきはじめると、それを外側に「どうにかしろ!」と要求しなくなります。そう、「痛み」の存在に気づくまでは、わたしたちは「パートナーこそが私を幸せにするべきだ!」という勘違いをしています。でも、自分も自由に生きたいように、パートナーも自由に生きたいし、生きる権利があるのです。
本当のところ、誰も「自分を幸せにするべき」ではないのです。もし一人だけいるとしたら、それは自分自身。
セラピーにおける恋愛、パートナーシップのご相談も、もとをただせば「相手がわたしの要求を満たさない。だから相手を変えるべきか、別れるべきか」なのです。関係がうまくいくとは、自分の要求がスムーズに満たされるかどうか。・・・相手にこれをしているときには気づきませんが、相手にこんな気持ちで自分を見られていたらいやですよね。「わたしは道具じゃないぞ!」と言いたくなります。
そもそも相手は「自分を幸せにするために存在している」のではなく、お互い自分らしい人生を生きて、それを「分かち合うために」存在している、という目線でみはじめると、今までもっていた怒りが「ちょっと違っていたかも・・・」と思えるようになります。
とくに映画やドラマの恋愛にこってりはまっていた方は、「え〜〜〜、相手に求めちゃいけないの?」とすごい意識の大転換になるのです。
すべては「自給自足」。外から調達しようとすると、相手に戦いを挑むことになります。大切だったはずの相手が「敵」になっちゃう。
でも自分の内側を変えてみると・・・これは予想外に大きなパワーがあるのですが・・・自分のこころが変わると、おのずと世界がそれについてきてくれる・・・そんな不思議を体験をすることになります。
(「気づきの日記」バックナンバーはこちら: 古川 貴子/ヒプノセラピスト・心理カウンセラー )
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