お茶の間シネマトーク「ピクサーさん、エライね! インサイド・ヘッド」

ヒプノセラピスト、古川貴子のブログ

いや〜、ピクサーさんはエライです。

こんなセラピスト好みのようなトピックを、堂々とこども向けアニメにしちゃってるんですから。それもけっこう、手加減なしです。

人の頭の中、感情がどうなっているか? なんて、そんな哲学的なテーマ、休日のとっておきの一本としてあまり見たいとは思いませんよね。でも、アニメにしちゃったからこそ、そしてピクサーならではのカラフルさとオチャメさがあるからこそ、立派なエンターテイメントになっているのだと思います。

潜在意識やら、抽象と具象、1次元、2次元、3次元・・・こんな言葉をならべられても、こどもはさっぱり・・・? でしょうに。もし日本でこの映画を作っていたら、きっとモロにおこちゃま向けになっていたかもしれません。こどもが見て、こどもがちゃんと理解できるようにって、やさし〜く、わかりやす〜く、そしてつまらな〜く、なっちゃっていたかも。

この「インサイド・ヘッド」は手加減なし、むしろ大人が、それも心理を扱うものが「そうそう、そうなのよ〜」と共感できるのですが、でもこのキュートなキャラクターやらめちゃくちゃカラフルな色やら設定のおもしろさから、言葉ではなく感覚から入っていけるので、こんなテーマであっても、こどもにもおとなにもウケるのかもしれません。

劇場はこども1、おとな2ぐらいの割合でした。

頭のなかでは、まさにここに登場するキャラクターたち、Joy(喜び)、Sadness(悲しみ)、Anger(怒り)、Disgust(ムカつき)、Fear(ビビリ)がせめぎあっているわけです。

セラピストのお仕事としては、このキャラクターたちがそれぞれ自分流のやり方で、その人を守ったり幸せにしようとすることで生みだされる混乱や葛藤を整理整頓していきます。それぞれのキャラクターには悪気はなく、ただご本人を幸せにしたいだけなのですよね。

たとえば、Angerは攻撃によって守ろうとするかもしれないし、Fearは引きこもりこそ最善策と考えるかもしれません。指揮官がいなくって、それぞれが勝手な幸せへの道へと驀進し、とりとめがなくなっているのを、セラピーではとりまとめてひとつの方向性を見つけていくわけです。

それにしてもこの映画、意外にも泣けるのです!(涙壷度・・・★★★☆☆)

誰もが感じたこども時代のこころの揺れを再体験できちゃう。

この主人公のライリーが成長していく日々は、観る人それぞれにあてはまり、「そうそうあのときAngerが出てきて、わたしのなかの大切な家族の思い出の島が崩壊したときがあったな〜」とか、「わたしもあの出来事でFearのいいなりになって、自分のなかの信頼の島を無くしたな〜」なんて、自分のことを顧みる機会になったりします。

これを観たこどもは、自分がいろいろな感情を感じる場面にであったときに、きっと以前よりも冷静になれるのではないかと思うのです。

最近見たDVDに「6才のボクが、大人になるまで。」という映画がありました。

6才の男の子が18才になるまでの、こころの成長と家族との葛藤を描いた作品。なんと同じ男の子が6才から18才までを演じているので、とってもリアル。(両親、おばあちゃん、兄弟たちもみんな12年間、同じ人です。)

「インサイド・ヘッド」でもライリーという女の子がいろいろなことを体験しながら、様々な感情に直面してく様子を描いているけれど、こちらもそれに通じるものがあります。

人生って平坦にうまくいくことが成功だと考えられがちですが、こうやって長い目でみると、ひとつひとつの体験がその人の色を染めあげていくのがよくわかります。

自分をもっと理解したい方、そしてこどもの成長が気がかりなお父さん、お母さんにもオススメの二本です。