お茶の間シネマトーク「永い言い訳」

古川貴子のブログ、ヒプノセラピー/カウンセリング

長い ・・・ じゃなくって、永い ・・・ 言い訳って? と、DVD屋さんで気になり手にとった一本。

「永い」理由って? ・・・ 言い訳を言いたい人が、今ではとどかぬほど遠くにいってしまったら、永くなる? あるいは、永〜く永遠に言い訳しつづけなければならないほど、うしろめたい?

言い訳をしたいときは、いつだってうしろろめたいとき。うしろめたさが強ければ強いほど、言い訳は長くなり。けれど、本当に言い訳を言いたい相手、受け入れてほしい相手とは、じつは自分自身なのですよね。

作家である主人公の幸夫(本木雅弘)は、浮気をしているまっただ中に奥さんを事故でなくします。どうにもならない後ろめたさを背負いこみ、なおかつ本来の癒されていない自己の複雑さもあり、まったく自分と折りあいがついていません。だから泣けません・・・。



そんなふうに自分を自分で認めていないせいで、まわりの人にあたりまくるし。そのうちなりゆきで、事故で亡くなった奥さんの友人のこどもたちの世話をすることになり ・・・。

いくつかシーンで印象に残ったのは、ドアがバタン!と閉まる音。

これはまさに、その人物が「もう、ムリ!それ以上近づかないで」と言っているような、自分から相手を切り離す音。登場人物がいっぱいいっぱいになると、バタン!と自分のこころのなかに逃げこむ音がするのです。

そして、たどたどしくって、どこかなつかしいピアノの背景音。

登場人物の不器用さ、一生懸命さとかさなって、愛おしさを感じる旋律です。

こんなピアノの背景音は、是枝監督の「そして父になる」と重なります。観ているうちに、いつのまにか是枝さんの作品かと思ってしまいました(モっくんが福山さんに見えてくるし・・・汗)。あとで知ったのですが、この原作・脚本・監督をつとめられている西川美和さんは是枝監督のもとにいらした方だったのですね。どうりで、是枝監督臭(笑)がぷんぷんします。

幸夫がこどもに話しかけるシーンがあります。これは彼が自分に言い聞かせているセリフです。

「愛してくれるものを、ないがしろにしたり、みくびってはいけない。離れるときは一瞬だ」と。

ホント、愛って慢性的になってしまうと、透明になってしまって、そのありがたさも、貴さも、大きさもわからなくなり、感謝するどころか、そのやさしさに甘えて自分の痛みをおもいっきりぶつけてしまうことがあります。相手が傷ついていることを知ることもできず。 ・・・ こころに残るひとことでした。

涙壷度:★★★☆☆(こういう話しにこどもを持ち出したら泣けること必至じゃないですかっ!反則ですぞ)

PS こどもとともに覚醒してゆく幸夫くんの姿がカワイイ♡