お茶の間シネマトーク「奇跡の絆」

古川貴子のブログ、ヒプノセラピー/カウンセリング

浮気の罪滅ぼしとして、奥さんであるデビーがボランティアをしているホームレスの支援施設で手伝いを始めるロン。

神経質なロンにとって、その環境は菌にあふれている不浄な場所で、こまごま手伝いをするより必要なお金を寄付することですまそうとするのです。一方、デビーは、何の偏見もなく真の思いやりと奉仕の気持ちで、そこにやってくる一人一人と平等に友人になろうと務めます。

そのホームレスのなかには、「自殺者」と名のる暴力的で破壊的で見るからに凶暴な黒人男性もいて、デビーの優しいひとことにいちいちくってかかってくる始末。しかし、デビーは彼がどのように振る舞おうとも変わりなく気にかけることをやめません。

そんなデビーの無防備であるがままを受けとめる姿勢に、すこしづつ心を開きはじめる「自殺者」ことデンバー。それとともに明らかになる、人種差別による過酷すぎる彼の過去。

「ムーンライト」という貧しい黒人青年の成長を描いたアカデミー賞作品を観たばかりだったので、この黒人男性デンバーの過去とも相まって、つい最近まであたりまえのように行われていた人種差別にこころが痛みました。

デビー・ロン夫妻とその黒人ホームレス デンバーとのかかわりあいにおいて、一見、裕福なデビーとロンが与えて貧しいデンバーが与えられるという図式なのですが、結果としては両者が同じように受け取り、癒され、解放されてゆきます。そして、それが当事者にとどまらず、もっともっと多くの人に広がってゆくことに・・・。

つながりあったときに起こるさまざまな愛の奇跡。

まったく偏見をもたず、過去ではなくたった今のあるがままをみようとするなかで、癒しというものは自然に起こってくるし、人は自分の真の姿をあらわさずにはいられないのだと感じます。

これはNYタイムズのベストセラーとなったノンフィクションをもとにしたストーリーなのですが、最後のエンドロールに黒人ホームレスのデンバーの実写と肉声があり、そこでこんな言葉が語られています。

「誰もがみんながホームレスであり、家に帰るために闘っている。その途上で、怒りと不安で不合理なことをしてしまうんだ」
「与えたものだけが、永遠にあなたの手にのこるものだ」

まったく無学なデンバーにとって、これはまさにハートで体験したことなのでしょう。



邦題は「奇跡の絆」といいますが、もとのタイトルは「Same Kind of Different as Me」、私とちがう同じ種類のひと。

違いに注目すれば、いつまでたっても違いしか見えないけれど ・・・ その違いという見かけを越えて、同じであるところを見ようとすることから癒しが可能となります。

癒しと日々向きあうものとして、多くの気づきをもらうことができる作品でした。

涙壷度・・・★★☆☆☆(実話はやっぱりこころを揺さぶるものがあります)

PS 無条件の愛にあふれた女性デビー。ずっと、この声、この話し方、知っているな〜と感じていたのですが ・・・ 観終わってしばらくして気づきました。レニー・セルヴィガーさん。あのオフィスの机に大きな板チョコをたたきつけてかちわっていたブリジット・ジョーンズも、しっとりと大人の女性になったのですね!(笑)