お茶の間シネマトーク「スリー・ビルボード」

古川貴子のブログ、ヒプノセラピー/カウンセリング

路肩に立てられた三つの広告看板から巻き起こされるドラマ。

ことのはじまりは・・・ 娘を殺害された母親が、その事件にまつわる自らの罪悪感をもてあまし、それをいまだ事件を解決できない警察に対する怒りにかえて、路肩に三枚の広告看板を立てたこと。

その罪悪感と怒りと悲しみによって立てられた真っ赤な三枚の広告看板は、それを目にする人たちのこころをザワつかせ、そこから引き起こされる出来事の数々・・・。

ひとりの怒りがほかの怒りをよびさまし、エラく破壊的な状況へとつながってゆきます。

殺人・暴力・自殺・襲撃 ・・・ しかし、観ていてあまり暗い気分にならないのはなぜでしょうか? メリメリはまりこむことなく、どこかドラマの外側からふかんして観ている感じがあります。

おそらくそれは、音楽のせいもあるかも?

はじまりのBGMなど、やたらのどかで平和です。その後も、楽しげな音楽が奏でられます。(私たちも日常で、メイメリとドラマにハマりこみそうになっているときには、突拍子もなくのどかの音楽をかけてみるといいかもしれませんね。シリアスになれません。笑)

また、いろんなところで小さく裏切られるストーリー展開 ・・・。

「きっと、こうに違いないよね」「こうなるよね!」というところで、「え? そうくるの? 」という驚きがいくつかあり、そのミスマッチな流れのせいで緊張感がうすらぐのかもしれません。

凶暴でとても笑えないはずの場面で、思わず苦笑しちゃったりします。

重苦しくならざるをえないストーリーのはずが、どこかに和やかででやさしい空気が流れているのを感じられて、観終わったあとも不思議な感覚の作品でした。

ほんとうにハリウッドの女優さんのリアリティはすごいな〜と感じます。

日本の女優さんだと、すさんだ様をメイクで作ろうとするけれど、この女優さん(フランシス・マクドーマンド)、マジな感覚があふれていて迫力があります。

だから、リアリティが圧倒的に違うのです(さすが、演劇の三冠王!)。凶暴性もハンパなくって笑えてしまうのですが、その反面、ピュアなところが愛しくうつります。

予想していた内容とは違っていた! という意味で、おもしろかったです。