お茶の間シネマトーク「運び屋」

古川貴子のブログ、ヒプノセラピー/カウンセリング

クリント・イーストウッド、ひさびさの監督・主演作です。

家族から完全に浮いている孤独な老人 ・・・ という設定は、前作の「グラン・トリノ」と同様。

仕事に没頭することこそが男の人生・・・ と信じてつき進んできたら、気がついたときには大切なすべてを失っていた ・・・ という。

その孤独な老人が家族とのあいだに横たわるミゾを埋めることができるように感じたのが、お金。孫娘の学費を払ったり、パーティを開いたり、家を買い戻したり・・・。

ひょんなことから手をそめたコカインの運び屋はそんな財源としてはうってつけであるとともに、彼にとってはけっこう簡単な役回りだったのです。となれば、この仕事は今までの間違いを修復するための最後の手段なのです。

運び屋としてえんえんと運転するハイウェイも、鼻歌なんか歌って気楽です。ドライブスルーに入ってスナックは買うは、道すがらパンクの車も助けるは・・・ 運び屋としての緊張感はゼロ。密売組織にしたら、そんな危険な行為はもってのほかです。

麻薬密売のチンピラに「おまえ、ふざけるな!ぶっ殺すぞ!」と言われようとも、よわい九十を数える彼は「殺せ!」とひとこと。まったく脅しがつうじません。朝鮮戦争の退役軍人である彼は、そんな若造よりもずっと度胸も智恵もあるのです。

これほどの高齢であることがまんまとカモフラージュとなり、運び屋としてのファースト ランはなんなく成功。目を丸くするほどの破格の報酬を受けとった彼は、人生を立て直すべくお金を使いまくります。 ・・・ となれば、二回めも。

しだいに運ぶ量も、ケタはずれとなり・・・。しかし、捜査の手がおよばないわけもなく・・・。

この作品は、超高齢、九十歳の運び屋おじいちゃんの実話をモチーフにしているそうです。

♪ 時間はお金じゃ買えない♪ という歌詞が最後に流れてきます。

この高齢でありながらどこか無垢な少年のようなおじいちゃんの佇まいに、クリント・イーストウッドが重なり(彼も今年九十歳ですね)、「ああ、次の監督・主演作がまた観られたらいいな〜」とちょっと切なくなりました。


彼の出演作、監督作はいろいろありますね。私は「ミリオンダラー・ベイビー」「クラン・トリノ」がお気に入りです。