メアリーってだあれ・・・ て?
メアリーは、誰もが知るあの「フランケンシュタイン」の作者です。17歳のころに物語を書きはじめ、わずか18際で世に送り出しました。
私たちがフランケンシュタインに惹かれてしまうのは、それがホラーや怪奇ものとは一線を画するから。なんぜ、フランケンシュタインは哀しいのです・・・(泣)。
理想の人間を求めてつぎはぎだらけで作り出されるのですが、できあがったのは醜いモンスター。作者から愛されるどころか、忌み嫌われ、見捨てられ、孤独と絶望のなかで生きることになります。
この見捨てられや孤独・・・ は誰のこころの奥にも潜む思いであり、この怪物の悲しみは読むものに「人ごとではない」感覚を与えるのです。(え〜〜ん! 作ったんだから、愛してくれ〜〜〜!!)
メアリーの父は作家でもあり、本屋を営んでいます。メアリーも作家志望で、こっそりと怪奇小説を読みあさる日々。
そんなメアリーに父親は、「人まねではなく、自分の声を探せ」と厳しくたしなめていました。
メアリーが16歳の頃、父のもとに学びにやってきた美貌の詩人シェリーとまたたくまに恋に落ち、妻子があることを知りながら駆け落ち。ここから、彼女の苦難が始まります。
お酒にも女性にもお金にもだらしないシェリーの放蕩で家も財産も失い、夜逃げの道中では生まれたばかりの赤ん坊まで命を落とすことに。
失意のまま身をよせたのが、詩人のバイロンの館。雨つづきの日々、退屈したバイロンがメアリーや滞在者に提案したあそびが、「ひとりづつ、怪奇物語を作って披露する」ことだったのです。
精神的にも肉体的にもギリギリの日々をすごしたすえに、バイロンというちょっといっちゃってる人物の登場で、メアリーはついに自分のこころの声にふれ、語るべき物語があふれだします。
まさに、シェリーとともにした二年のあいだの痛みこそが、メアリーのこころの叫びを外に押しだしたのです。
その物語の怪物は、自分を生みだした作者に嫌われるわけですが、それはまさに自分の出生によって命を落とした母に対するメアリー自身の罪悪感を重ねあわせているようです。
また、死んだ者を蘇らせたいという願望も、亡き母と娘へのこころの叫びだったのかもしれません。
これはわずか200年まえのことですが、まだロウソクで本を読んでいる時代です。そして、女性が本を書くということすら、正々堂々と認められる時代ではなかったのです。
「フランケンシュタイン」は、初版こそ作者の名前がないのですが、その後は堂々とメアリー・シェリー著と記されたようです。
メアリー役のエル・ファニングはちょうどメアリーと同じ年代でしょうか? 知的な美しさで、当時のドレス姿も似合っています。
映像も雰囲気があって、まるでヴィクトリア朝の絵画をおもわせます。
バイロンの館にハインリヒ・フュースリーの「悪夢」がかけられています。
メアリーはこの絵画にも影響されるのですが、フュースリーがメアリーのお母さんの恋人だったというのも、なおさら彼女にこの絵を印象づけたのかもしれません。
私もその昔、この絵をはじめて観たときに惹きつけられました。フロイトもこの絵を好きだったそうな。人のこころの奥深くにあるシャドウを刺激するような絵です。(たしか「ゴシック」という映画でも、この絵が題材にされてましたっけ。)
映画のなかで語られている「フランケンシュタイン」の文章がとても表現力豊かで美しかったので、是非、メアリーの文章を読んでみたくなりました。