お茶の間シネマトーク「ファースト・マン」

古川貴子のブログ、ヒプノセラピー/カウンセリング

アポロ11号の月面着陸といえば・・・ 世界中で5億人もの人たちが固唾を飲んで見守った一大イベント。

着陸成功という場面だけにスポットライトをあてれば華やかな偉業ですが、そこに至るまでのプロセスというものがあります。

ライト兄弟がたった37mの有人動力飛行に成功したのが、その60余年まえのこと。あっというまに空を突き抜け、地球を横目に、月に降り立つ、というスゴ技を誰が想像できたことでしょう? NASAはだ捕した宇宙人から、なにか秘密を聞きだしたのでしょうか?(笑)

この「ファースト・マン」は、アポロ11号の船長 ニール・アームストロングがプロジェクトに志願して、ミッションを遂行するまでの苦難の数年間を描いたもの。

半世紀まえといえば、まだコンピューターも今ほど計算能力もキャパも速さもない時代。不測の事態が起これば、カリカリと必死に手で計算するしまつ。すてべが未知で手探りで命がけです。

そして、想定されるありとあらゆることに対する過酷な訓練(これは見ているだけで具合が悪くなりそう・・・汗)。訓練飛行やテストのたびに、仲間が命をおとしてゆく日々・・・。

プロジェクトに携わるニールのみならず、家族も混乱状態。「彼と結婚したとき、こんな生活など想像していなかった・・・」と奥さんのジャネット。

着用するだけで息苦しい宇宙服を身につけて、人がようやく納まる小さなコックピットに押しこまれ、まるで囚われたように外からガシャンとロックされ(これだけでも誰もがパニック発作を起こしそうです)、やがておそろしい爆音と震動とともに未知なる暗闇へと投げ出されてゆきます(およそ人間が体験する行為ではありませぬ!汗)。

映し出されるのは、ヘルメットのなかのニールの目の表情とコックピットの小さな窓にうつる空と宇宙、そしてヘルメットの中の呼吸の音、ロケットエンジンの轟音やら振動音 ・・・ 是非、ニールとともに宇宙飛行士になっちゃってください。

アポロ11号が無事に帰還し、世界中がわくなか、ニールとジャネットの再会は  ・・・ 「おめでとう!」でもなければ、「やったね!」でもないのでした。

また違った目線で、この月面着陸という大イベントを感じることができる作品です。

PS ロケットが大気圏に突入して、まるで爆発しそうな火の玉のようになって疾走し、ようやく静けさに達する様子って ・・・

私たちがエゴという制限を越えて、真の自分を目指すときに体験することとよく似ています。エゴが武装するためにかき集めたあれこれが焼き尽くされるような激しさ(ほんとうは握りしめているから激しく感じるのでしょうけれど・・・)、それはまさに大気圏突入状態。

自分だと信じていたものから自由になろうとするときに感じる怖れも、アポロの大気圏突入のようにただ正面から突き進むことで、そこを尽きぬけ、静寂に達することができるのでしょうね。