「ランチをしたあと行きたい喫茶店があるんだ」と言われ、
喫茶店?! カフェじゃなくって、あえて喫茶店っていうことは ・・・ クリームソーダやナポリタンがある昔ながらの純喫茶か、はたまた初老のマスターが一杯づつ丁寧にサイフォンやネルドリップでいれてくれるこだわりのお店か ・・・?
どっちも違っていました。「名曲喫茶」だったのです。
名曲喫茶とは、珈琲などを楽しみながらレコードから流れてくる音楽に静かに耳を傾けるお店。
新宿にはまだあると聞いていましたが、渋谷にもあったのですね。
見てください! この外観。名曲喫茶ライオンといいます。
(撮影:MM氏)
なんと、創業1926年だそう(おおよそ100年まえ!)。一回戦火で消失したそうですが、それでも再びつづけられたのですね。
当時はステレオでさまざまな名曲を自由に聴くことはむずかしかったと思うので、このお店は名曲と珈琲のある贅沢な空間だったことでしょう。
お店のプログラムには、「帝都随一を誇るステレオ音響完備」とあります。「帝都」という単語が年代を感じさせます。
お店のなかは撮影禁止なのですが、壁一面に巨大なスピーカーがあり、当時からのレコードプレーヤーも置いてあります。
きらめく古いシャンデリアや木でできたゴシック風の柱を見ていると、ここで過ごした人々の雰囲気や流れた数々の音楽が肌で感じられるようです。
ここのシステムはどうなっているのかわからなかってのですが、コーヒーを持ってきてくださったおにいさんに「リクエストなんてできたりするんですか?」と尋ねてみたら、「はい」と言われ、
「どうやって?」と再び尋ねると、「口頭で」と。
では!と、すかさずリクエストを口頭で伝えました。
この日は冷たい雨降りだったので、青空と広がりと風が感じられる曲が聞きたくて、「じゃあ、ラフマニノフのパガニーニの主題によるラプソディの18を」とお願いすると、おにいさんは題名を復唱することもなく静かに「はい」と答えると去ってゆきました。
この日のお店のプログラムはバルトークだったので、先客のリクエストとバルトークがかかったあとに、曲目と演奏者の紹介があって私のリクエストがかかりました。
お店いっぱいに広がる重厚なレコードの音色。大好きなルービンシュタインの演奏で嬉しくなりました。
お店にアルバイト募集のはり紙があったそうですが、クラッシックからグレゴリオ聖歌まで網羅する知識があり、瞬時にレコードをピックアップするためには相当な経験が必要そうです。店員のおにーさん、すご〜〜〜い☆
びっしりと収納されたレコードは毎日出し入れされたせいで、すっかりジャケットがすりきれていました。
ひさしぶりにレコードからの音色を聴きましたが、CDにくらべてしっかりと重さや奥行き、広がりがあるように感じ、こころに沁み入るようでした。
思わぬステキな体験ができました。お誘い、ありがとうございました。楽しかった♪