12-02-12 ココロの日々ケア

わたしたちがココロにダメージを受けてバランスを崩してしまう原因は、成育過程で虐待にあったり、大きなトラウマ体験があるというようなことばかりではありません。

他の人は気づかないようなほんのささいなことが少しづつココロの棘として残ってしまい、あとで大きな問題になることもあります。

たとえば、言葉にすらされないノンバーバルコミュニケーションで、母親がしっかり目を見て話してくれないとか、態度でプレッシャーをかけるとか。いっけん、気がつかないようなこと。問題を抱えるお子さんをお持ちの親御さんと話しをすると、わたしはそんな虐待はおろか、ひどい育て方はしていないとおっしゃいます。はい、たしかに。ほとんどは言葉というよりはエネルギー、その子の心に沿っていないコントロールや強制的な態度、認めない態度が問題なのですね。そんなとってもささいに見えることが永年ボディーブローのように効いて、それを受けたこどもは大人になって「とにかく依存したい」とか「どうしても自己肯定感が持てない」「うつっぽい」など、知らず知らずのうちに弊害を被っていることが多々あります。

じゃあ、成長して大人になったからもう大丈夫かというと、そんなことは全然ありません。

そして日常生活でも、わたしたちはまさにボディーブロー的なストレスを日々受けとっております。

セラピーにいらした方に、「現在お持ちの心や身体の不調が起る前に、何かストレスを感じましたか」とお尋ねします。すると、「恋人と別れました」「仕事で失敗して怒られました」などの大きな心理的プレッシャーが存在する場合もあるし、まったく何もなかったとおっしゃる方もいらっしゃいます。

でもほんとうに何もなかったのかというと、じつはあまり意識されていないボディーブロー的なストレスの積み重なりというものが存在していて、それは心身のバランスを崩すには十分なのです。人は日々、心の中で感じた葛藤や、クエスチョンを正当に処理をしておかないと、そんな微々たるものの積み重ねで大きくバランスが崩れココロが誤作動を起こしてしまうこともあるのです。

先日いらしたクライアントさんのAさん。「うつぽくって、自分なんか消えてしまいたい」と。生育歴や過去の心理的傾向をうかがっても、さして問題は見当たりません。

セッションをすすめてゆくうちに浮かびあがってきた場面は、ある雨の日に傘をたたもうとしていたAさんに高校生の男の子たちのグループが乱暴に体当たりしてきて「もたもたすんなよ!ババア!」とののしられたこと。そして、そこから過去に何度か電車やお店で理不尽な扱いを受けたことがあったという記憶が甦りました。自分がとった電車の指定席におじさんが坐っていて、「そこはわたしの席です」と言っても何の反応も示さず坐っていたとか。

こういう言葉の暴力、態度の暴力は、ささいなものとして自分が意識しない分、じつは心の中では未解決になっていることがあるのです。そのような体験が重なったAさんは、その度にモヤモヤした気持ちを抑圧し、また「こんなことされるなんて、じつはわたしって価値がないのでは」「ほんとは、わたしが間違っている?」という余計な信念をつくってしまったのです。

いちばんいいのは、その事件が起った日に友人にでも電話して「きょう高校生のガキどもにババアなんていわれちゃってね〜。ひどいったら。あんなガキどもにいわれたくないわよね〜」と笑い飛ばしてしまえば、そこでエネルギーは解消されたことでしょう。

日々の生活の中では、自分のルールとはまったく違う行動をとり、それによって気持ち的に傷つけられることもあるものです。先日こんな話しも聞きました。コンビニでせっせとコピーをとっていたら、いきなり知らないおじさんが横入りしてきて、自分の原稿をちゃっかりコピーし、ありがとうでもお金を渡すでもなく、そのまま消え去ったとか・・・・。コピーをとっていた彼女はまさにフリーズしたそうです。そしてそのあと、案の定もやもやが続いたとか。こんなのに遭遇することも心のバランスを崩す原因になっていることもあります。

そんなときには、「わあ、びっくりした!」とおじさんに向かって叫ぶとか、あとでコンビニの店員さんに「今、すごい変な人がいたんですよ〜。割り込んできて」と相手がヘンであったことの決着をしっかりとつけるような行動をとっておくといいようです。そうでないと、モヤモヤが長引き、他の問題とドッキングするとさらに複雑になります。一個、一個、小さなビックリ、モヤモヤはそのつど、友人に報告する、心の中でしっかり“びっくり”リアクションするなどして「これはおかしなことだった」ということを自分に教えてあげるといいですね。

ココロというのは、自然治癒力がありたくましい反面、大きなストレス、たびかさなるストレスには繊細に反応します。毎日歯を磨くように、毎日ゴハンを食べるように、ココロの健康もその日のココロの状態に目を向けながら、友人をなぐさめ、はげますように日々ケアしてあげることが大切です。