12-02-27 不満をじょうずに口にするには? その1

いつも自分の感情を飲み込みがちだというクライアントのAさん。

奥さまとの関係でも、「いやだな」と感じることがあってもガマンしてしまうことたびたび。なぜなら、そんなささいなことで何か言おうものなら「小さっ!」と思われそうだし、自分さえ黙っていれば波風が立たたず、いちおう家庭の平和は保たれる・・・と。でも心はいつもモヤモヤ、曇り空。うつうつが晴れることはなく、ついに「なんとかすっきりしたい!」とご相談にいらっしゃることになりました。

男性にしろ、女性にしろ、「波風を立てたくない」という理由で人間関係のフラストレーションに目をつぶってしまう方は多いようです。

しかし前回のトピックでもとりあげましたが、小さなモヤモヤが少しづつたまることによる心の弊害って、予想外に大きなものがあります。ある日突然、理由がはっきりしないウツや精神のアンバランスを招きかねません。

健康的な精神状態や人間関係を保つには、何か自分の気持ちがスッキリしないというときにはそのままにしない、ということが大切です。今、何がひっかかっているのかを明らかにしてゆくこと。もしそこに他の人が関係しているのなら、怖れずにコミュニケーションして改善をはかる努力が必要です。

でも自分のスッキリしないことを表明するのは、相手との気まずさやケンカに発展するのでは?とみなさん心配されるのです。

Aさんにも「日頃から、もっと気になることについて話してみたらどうですか?」と提案すると、ケンカはいやなんです・・・と。「ちょっと待ってください。“話すこと” =  Aさんにとって“ケンカ”なんですか?」とわたし。

そうなんです。「自分が相手に対して気に入らないこと、イライラしていることを口にするのは、つまりケンカを売ることだ」と考えている方が多いのに驚かされます。

たとえば、「そのオモチャひとりじめしないで、こっちによこせよ!」「なんだと〜、オレが今、遊んでいるんだぞ〜」「よこせったら、よこせ!」「おまえなんかに渡すか!」「コノヤロ〜、よこせよ〜!(ボカッと殴る)」・・・・というように、不満を口にするっていうのは、幼い頃にはこんな感情的なケンカに発展しました。

ま、そのやり方しか知らなかったからしょうがないのですが。

でも、これってコミュニケーションでしょうか?これはたんに自分の主張をぶちまけ、相手は当然防衛的になりそれをつっぱね、戦いへと発展します。この図式でいつも自分の要求を通そうとすれば、当然、相手に不満を言うことはとても危険な状態を引き起こします。

これがうまくいかないのは、「本当に相手に伝えたいメッセージ」、つまり「ボクもそのオモチャで遊びたいの」という要求が正しく伝わっておらず、そのかわりにそのオモチャで遊ばせてもらえない怒りの感情が先行してしまい、単に感情をぶちまけることになってしまっているからです。

当然わたしたちは、攻撃されたら同じようにやり返します。あるいは、逃げ出します。でも、そこでは「やった、やられた」という戦いとなり、本当に伝えたかった「ボクもそのオモチャで遊びたい」というメッセージは残念ながらまったく伝わりません。相手をおびやかしてしまったら、相手は一気にコミュニケーション・チャンネルを閉じてしまいます。

この不満をのべること=ケンカという図式も、おそらくおうちの中で両親が「自分の主張」をするときに感情のぶつけあいになるのをつぶさに見てきたことにより、無意識のうちに学習した結果です。「不満をあらわすときには、感情をこめてああやってやるんだな」と。でもAさんの場合は、「あんなことはやりたくないから、波風はたたせず飲み込む」という選択にいたったわけです。

そこで対立をさけてガマンしたからといって、その不満のエネルギーはなくるわけではありません。それは潜在意識の中に少しづつ少しづつため込まれ、ある日突然、自分にも相手にもわけのわからない「大爆発」を引き起こしてしまうことがあります。はたから見ると、「こんなささいなことで、なんであんなに怒り狂っているのだろう?」と人はビックリします。

たとえ大爆発にならなくても、抑圧した感情によっていつのまにか相手に対して嫌悪感を感じるようになっていたりします。潜在意識では、もうガマンしたくなくって自然とその人から離れようとするのです。(相手にしてみたら、そこまで嫌いになる前に、なんで話してくれなかったの?と言いたくなりますよね。)あるいは、病気になってこの戦いから逃れようとする場合もあります。

そんなことにならないために、こまめに不満を口に出すことはやっぱりとても大切。

さて、「気に入らな二ことを口に出す」ことと「ケンカを売る」ことの違いは何でしょう?

このようなフラストレーションのある状況の中で、どうしたらわたしたちは自分の欲しいゴールを達成することができるのでしょう?

(その2に続く)