13-06-07 こころのキモチと、あたまのキモチ その2

(その1より)

このココロの声を無視して大丈夫なフリをしていると、外から見るとどこか不自然な感じと不正直さが伝わってしまいます。わたしたちの醸しだす雰囲気って、本人がそれを隠しているつもりでも、かなり的確にまわりに伝わってしまうものです。なので、大丈夫なフリをすればするほど、態度と言葉が一致していない不安定さを感じさせてしまいます。

それと同時に、自分を大切にしていないと、相手にもOKを出せるようにはなりません。(「わたしがこんなにガマンしているんだから、あなただってこのぐらいはガマンするべきでしょ!」と同じレベルのつらさを相手にも要求するようになってしまうのですね。)

A子さんにおうかがいすると、やっぱり小さい頃から自分の感情は押し殺す「いい子」を演じてきたようです。きっと、人生のとても早い時期に、感情表現をしたら傷つく体験をしたのでしょう。

・・・ということは、もしかするとA子さんは、「自分の感情がわからない人」ではなくて、じつは「誰よりも感情に敏感な人」、つまり「感情が豊かで、感情を感じやすくたくさん表現していた人」だったのかもしれません・・・だから、よけいに傷つきやすかったのかもしれません。

そうなんですよね〜。幼いころ傷ついた部分は、性格が反転してしまうのです。いっしょうけんめいいろんなことをお喋りをする子だった、けれど父も母も耳を傾けてくれなかった → もう、彼らには喋らないを!と決める → 無口な子、というように・・・。なので、「わたしの性格のこの部分が嫌いで・・・」というクライエントさんには、「大丈夫ですよ〜。もともとそういう方じゃないですから」と、今は反転しておおい隠されてしまっている本当の自分がいることをお話しします。

A子さんには日々の生活の中で、まずは「自分が何を感じているのか」を折々の場面で自覚する練習をしていただくことにしました。

「ねえ、今、あなたはどんな気持ち?」と一日に何回も自分に問いかけます。

的確に自分が感じていることを捕らえるのはむずかしいと感じるかもしれませんが、「なんかモヤモヤしてるな」とか、「落ち着かないよ」と漠然とした感じならわかるかもしれません。

そうしたら、それが身体のどこにあるかもうちょっと調べてみます。「う〜ん、そのモヤモヤは胸のとこかな?・・・あ〜、さっき言われたことに納得していなくて、ムリやりおしつけられたことに悲しんでいるかも」。

そうしたら、それに対しては「いい」とも「悪い」とも価値判断することなく、ただ受けとめてあげます。「そっか〜、さっきの言葉で傷ついちゃったんだね〜」

人とのコミュニケーションの中でもそうですが、わたしたちは全面的に、無条件に、真剣に「受け入れてもらう」ととても安心します。すると、何も状況は変わっていないけれど、「よし!頑張ってみようかな」と前向きな気持ちになることができます。

気持ちにおいてもしかり。自分の気持ちを「いい」「悪い」の判断なして、しっかりと受けとめて、認めてあげると、その気持ちは安心します。ちょうどドッヂボールをしていて、正面からきたボールをお腹でドスンと受けとめるような感じです。正々堂々と、真っ正面から真剣に受けとめてあげます。

そうするとなんかいったん落ち着いて、その後にどうすればいいのかも見えてきたりします。「やっぱり、納得していないな〜。ちゃんと気持ちを伝えて、できませんって言ってみようかな〜」というふうに。

なんでもそうですが、姿がはっきりしない得体の知れないものはイヤな感じがしますよね。でも、いったん「それが何であるか」を見きわめることができると、わたしたちはホッとするのです。(気持ちを文字にして書き出してみるのも、オススメです。)

A子さんは自分の気持ちをちゃんと文字にしてはっきりと認めてあげる習慣をつけたら、娘さんとのコミュニケーションも変化したそうです。一方的に押しつけることはなくなって、かならず娘さんの気持ちを聞いて、しっかりと受け入れてあげてから、さてどうしようかと二人で一緒に考えることができるようになったそうです。そうすると、娘さんもたくさん気持ちを話してくれるようになり、A子さんも素直に「ママ、きょう疲れてちょっとイライラしてるかも」と自分の弱さを出せるようになりました。

こんなふうに、決してなくなることがない感情エネルギーをうまくガス抜きする習慣を持つと、自分が自分の感情にホンロウされて「人生、こんなはずじゃなかったよ〜」と後悔することが少なくなるかもしれません。

やっぱりいつでも大切なことは、理屈をこねくりまわして「オッケー!」といいそうになるウソつきなあたまのキモチはおいておいて、まずは自分のこころのキモチをていねいにひろってあげて、自分を大切に尊重してあげることなのですね。

やさしくするのは、まずは自分から!

この姿勢を持てるようになると、外側を気にしてブンブン振りまわされることも少なくなり、だんだんと自分のペースができてくるし、自分のことが信頼できるようにもなってくるのです。(^_^)v

 


「気づきの日記」バックナンバーはこちら: 古川 貴子/心理療法家・ヒプノセラピスト)