気づきの日記「人の話なんか聞いちゃいません、私達」その1

急に猛暑がやってきましたね。まだ夏の準備ができていない体はびっくりしています。みなさまは大丈夫でしょうか?

さて、このところ思春期のお子さまとのコミュニケーションのご相談が続いているので、きょうはそんなテーマです。

お母さまいわく、「思春期の娘に気をつかって、以前よりも時間をとって娘の言うことに耳を傾けているんです。なのに、“お母さんはまったく私の話を聞いていない”といわれてしまって・・・」

「う〜ん、おかしいですね?時間までさいて聞いているのに・・・。ちなみに、どんな聞き方をされているのでしょうね?わたしが娘さんになりますから、ちょっとやってみましょうか」と最近の問題を再現してみることに。

娘役のわたし「もう、学校行きたくなくなっちゃった」
お母さま「行きたくないなんて・・・突然どうしたの?まだ三ヶ月だし、それに頑張って受検した学校じゃない」
娘役のわたし「でも、行きたくないんだよね・・・」
お母様「何が問題?あんなに入りたいって言って入った学校じゃない」
娘役のわたし「・・・・」
お母様「ここの学校がいいって言ったのはあなたよ。この学校じゃないと大学受験も不利になるでしょ」

たった一分やりましたが・・・お母さん、ダメです〜。これだと娘役のわたしはすでに話せなくなりました。

なぜなら、行きたくない気持ちを打ち明けたら、いきなり「それはおかしい」といわんばかりの否定モードで、「そこを選んだのはあなただ」とさとされ、そのあとに続くのは「あなたの将来はだめになる」という脅しモード。これは「聞いている」というより、「もう、あなたの言い分なんか聞きたくない」と言っているようなものです。

娘さんが「学校に行きたくない」という場合は、「行きたくない」という事実よりも、そのウラにある気持ちが重要で、自分でもその気持ちに葛藤しているのです。だから、迷いを汲みとって共感して欲しいと思っています。

でも、たいていお母さま方は「この子は未熟だから、何かを間違えてしまっている。だから、教えたり、正したり、いましめたり、指示をしなければいけない」と考えていて、その子が口を開くやいなや、その子の言葉の間違い探しを始めてしまいます。正しいとことは聞くけれど、そうでないところはまったく聞かないのです。

これは、「聞いている」というよりは、「一方的に正されている」としか感じません。せっかく時間をとっても娘さんが満足しないのは、この一方的に結果を決めつけて押しつけられているような、上から目線の態度がいやなのかもしれません。

わたしもこんなことがありました。近しい人がえらく落ちこんでその気持ちを話してくれたとき、「何か、早くいい気づきを与えなくちゃ!」とばかりに、さっさとアドバイスしようとしたら怒られました。「何も言わなくていいから、ただ聴いてくれ!」と。「聴いてくれるだけでアドバイスはいらない」とまで言われたのでした。

そのとき、ハッと気づきましたよ、まったく「聞いちゃいない自分」に。そして、アドバイスしたいわたしはじつはネガティブを怖れている・・・と。ネガティブに感染するのがいやで、さっさとこの場を切り抜けようとしていたのです。そして、聞いているといいつつも、じつは自分に都合のいいことしか聞こうとしないのです。(セラピストと言えども、日常はこんなもんです・・・苦笑。)

落ち込んだり、悩んだりしている人はその気持ちを吐き出したいのです。

では、話をちゃんと聞く、ってどういうことでしょうか?

(その2につづく)

 

「気づきの日記」バックナンバーはこちら 古川 貴子/心理療法家・ヒプノセラピスト